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                  適当に妄想小説やキャラ絵を 垂れ流したり躊躇したりする そんなブログでございます。


by くるひよ
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第一話:はじめまして

ガタンガタンガタン

自分は列車の中に揺られながら、田舎道を走っている
有り体いた夢を思い出して、列車の外をじっと見つめる。
こんな状況に陥っている時点で夢は叶いそうに無く溜息を付きそうになる。
元気を出せよとばかりにゴトンと大きく列車が揺らしてくる。
そして、事の発端は自分の仕事が原因である


自分は無職という奴で、職を探す日々を送っていた。
ただ、自分は低学歴であるとか資格をもってないとかそう言うわけではない。
単純に、新卒で就職できなかったというだけである。
主にコミュニケーション不足が原因だった。
それから、というものの倦怠な日々を過ごすことになっていた。


ある日、母親が溜息つきながら言った。
「また、落ちたのかい。コウもいい年なんだから・・・」
「しかたないだろ。自分のアピールなんてうさんくさくて嫌いじゃ。」
「なんでや。」
「なんでって・・・嘘ついてまでアピールしたいなんて思うとらん。」
 というより、自分をアピールすること自体が自分は怖い物だと思ってしまっている。
言わば、臆病という奴だ。自己紹介をするときですら妙な冷や汗をかく。
「嘘ねー・・・、コウの場合は自分の良いところすらわかっとらん気がしとる。」
やれやれと母親が首を振る。
「ナイナイ。」
「・・・ふぅ、試しに一回仕事試してみるかや。」
「あるのか。」
「ばっちゃのところはいつも人手不足らしいきね。」
「なんだ、お手伝いってことか。」
「いんや、給料は出る。」
「給料が?」
「そうや、ばっちゃはその土地の首長やからね。」
「やっぱし、お手伝いじゃないか。」
「地方の一員として仕事をする。立派な社会人の務めや。」
「いやいやいや。」
「けど、まぁいいか。どうせ今の自分じゃどこにも仕事に就くことも出来ないし。」
「わこうた。ばっちゃに言っておくき。」

という理由があってで、列車にガタガタと揺らされている。
おばあちゃんの家は随分と田舎にあるらしく
先ほどから列車の外を見ていても古びた家や店、後は自然があるぐらいだ。

「もうちょっとだけ便利な場所だと思ってたんだけどな。」

自分はぽつりとそうつぶやいて、列車の外をじっと見つめる作業に戻る。
見つめながら、そう贅沢を言ってられない状態であることを思い出した。
思わず、2度3度溜息を吐いてしまった。
それから1,2時間経った後、目的地にたどり着いた。
疲れを取るために、両手を真上にぐっとのばし一息をついた。
そして、重い腰を上げて列車の外へ足を踏みしめていく。
やがて、見えたのは家だかりと山だった。

「まぁそうだよな。だけど、スーパーみたいなものもあるし大丈夫かな」

自分にそう言い聞かせて、親からもらった地図に目を通す。
これで大体大丈夫!という文字がやけに目立っていた。

「大体って時点でアウトだよなー・・・」

前途多難な道のりに不安に思いながら割りと舗装されている道をひたすら歩く。
人の気配がしたのでふと顔を上げた。

~ここらで区切ります~(以下は未編集)
 
そこには一人の少女が立っていた。
 地元民の助けが借りれる。ちょうど、良かったと思った。
「あのー、すみませんが八柱というご老人の家を知りませんか」
 よく考えたら、この質問は馬鹿すぎた。
 いくら田舎とは言っても全員の顔を見知りあってるわけじゃない。
「うん、知ってるよ」
 だよな。案の定見知りあってるわけかって、え?
「そ、そうですか。もし宜しければ案内してもらっていいですか?」
「どのようなご関係?」
「祖母です。」
「んー」
 と少女は自分の方をじろーと足先から頭まで見る。
 見られたからにはお返しと言うわけではないが
 つい意識してこっちまで良く見ることになる。
 髪の毛はショートで黒い色、目はくりっと大きく
 まさに少女と言った感じだ。後はまぁかわいい。
「大体おんなじ感じの歳だよね」
 と自分に聞いてくる
「17歳ですが___」
「なら、大体一緒だ!」
 と少女は身を乗り出してきた
「ならさ、敬語とか無くていいよ。ね?」
「・・・わかった。なら、案内してくれるかな?」
「いいよ。えっと、名前は・・・」
「久万広一(くまこういち)だよ。君は?」
「包国(かねくに)かなだよ。くま君?」
「わかったよ包国さん。で、お願い叶えてもらっていいか。」
「わかったよ。じゃ、着いてきて。」
 とぴょんと前に振り返りながら跳んだ。

 町並みを通り過ぎ、家がぽつぽつになってきた。
 いよいよを持って、山の方がやたら目立つようになり
 田んぼの情景が広がっていく。
 こんな場所は自分のイメージとしては土道だと思っていたが
 一応コンクリートで舗装されていて歩きやすい。
「んー、久万君はさ。旅行かい?祖母孝行かな?」
「あー、いや単純に引越しかな。親が海外出張でね。」
「へーへー、両親が海外出張。偉い人の子どもなんだね久万君って。」
 海外出張がえらい?まぁ、すごいと言えばすごいけどさ。
 そんなに珍しいのかな・・・・田舎だから?
「偉い人じゃないよ。うちの親は。」
「そうなんだ・・・そっかぁ・・・」
 声が若干おちているように聞こえたから
 前を歩く少女を後ろからふと覗き込んだ。
 顔は落ち込んでいるのではなく、望郷の念というかしみじみとしたような表情だった
 なんていうかおばさんくさい。
 この話を引っ張って、これから顔をあわすかもしれない人に自分の事情を
 詳しく知られても面白くない。
 だから、話を逸らすことにした。
「あのさ、家ってまだかな?」
「ん。そろそろやきー、がまんしてな。」
「あ、はい。」
 彼女の声はゆるゆるとしていた。人にすとんと落ちる声だった。
 自分は窘められたように淡々と歩き続けていた。
 そこから、自分達に会話が無かった。
 会話が無いと言っても、気まずいわけではなく
 休日の昼下がりで太陽にぽかぽかと照らされているような感覚に近い。
 まぁ、居心地が言いとでもいうのだろうか。
 そのせいか気持ちに余裕ができたので、改めて周りを見回した。
 民家のともし火が不規則にぽつぽつとあって、月明かりだけで道が照らされていた。
 なんていうか・・・

 こんなに時間もたっていたのか。

「じゃねぇ!」
「はい!」
 おれが思わずびっくりして大声出していた。 
「ど、どうしたのかな?」
「いや、ごめん。けど、今大体何時くらいよ?」
「戌の刻ぐらいかな。」
「てぇと、大体8時ぐらいか。おばぁちゃんちってこんなに遠いのか」
「・・・ごめん。ちょっと寄り道しちゃってた」
「そっか・・・・じゃねぇ!」
「はい!すみません!」
「あ、ごめん。まぁ道を教えてもらっているわけだから別に怒らないけどさ」
「何か久万君が厳しい顔をしてるからね。
私たちが住んでいる場所をおしえてあげてたんだよ」
 してたか?人の前では機嫌よくってのが世渡り術だし。
 やっばいな。俺もまだまだ感情を隠しきれてないかもしれん。
「ありがとう。」
 とりあえずそう言って置こう
「はい。で、着いたよ。」
 気がついたら目の前に民家があった。
「・・・道を教えてくれてありがとう。」
「ううん。困った時はお互い様。じゃぁね。」
 彼女は手を振って暗い道に帰っていった。
 また、おばぁちゃんちを見直した時、虫の音が聞こえた。 


 
by piyoppi1991 | 2011-03-09 23:17 | 小説3