適当に妄想小説やキャラ絵を 垂れ流したり躊躇したりする そんなブログでございます。


by くるひよ
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<   2012年 03月 ( 9 )   > この月の画像一覧

ぎゃー

何してたんだろ。
ゲームばっかやって小説全然書いてなかった。
絵もあんまり進んでないし・・・どうしたもんやら。
ま、とりあえず絵でも書くか。
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by piyoppi1991 | 2012-03-27 13:53 | 雑記
ある少年が悪夢でうなされていた。
ひとしきりベットの上で悶えた後に突然身を乗り出し起きる。

「はぁはぁはぁ」

少年は悪夢で疲弊した体を息で整えている。
落ち着いたところで、目にかかる前髪を手でたくし上げた。
幼さが残るその容姿に困惑の表情が浮かぶ。
何故、とはやる気持ちを抑えてただ一言呟く。

「何で俺は悪夢なんて見てるんだ。」

全くの謎で、頭から離れない悪夢である。
内容は詳しくは分からない。
夢だから当然なのだけれども、違和感を感じた。
不意に、少年の視線に時計が入る。

「午前3時か、よし。」

時間を確認した後に、ベットから出て、少年はいつもの日課を行うことにした。
日課とは、武術である。
もちろん誰かを倒すためにやるわけでもなく、平安とした世には必要ない
かもしれないし、少年は何に突き動かされるわけでもない。
昔、ある人が見せた武術がかっこいいと言う理由で
サッカーがかっこいいといった話とそう変わらない。
そして、武術が少年にとっての生活であった。
生活をするために少年はいつも鍛錬する場所に向かった。
そこはファークロスと言われる地形で
地球を一周ぐるっと回って掘られている大きな溝である。
溝の幅中心沿いは川が通り、両側は揺るやかなカーブで形成されている。
少年が向かう緩やかな坂は草っぱらで運動する分には最適と言える。
ちょうど、土手沿いに似た光景と考えればよいだろう。

「すうー。」

少年はひとしきりの鍛錬を行った後に腕時計を見る。
その針は7時を指して、学校への準備をする必要のある時間帯だった。
少年は肩を2度3度回した後に、草の原で歩いて帰宅しているときに
川の淵で大きなものが横たわっていることに気がついた。
少年は大きなものを見つつ

「犬?」

と発言した。
犬と呼ばれた巨大なソレは銀色の毛波と3mほどの巨躯を持ち合わせていた。
しかし、力強い姿とは裏腹に巨体な犬は随分と弱っているように見える。
少年はその衰弱した状態に気づいて、背負って家に持ち帰ることにしたようだ。
当然、そんな巨大な犬は存在し得ないので
少年のお持ち帰りする姿を通行人が見て、腰を抜かしていた。

帰宅した後____

少年は学校に着くと、席に座る。
鞄から教科書を取り出し机の中へしまおうとした。
その時、教室の入り口から勢いよくドアを開ける音がした。

「ひぃー、何とか間に合ったよ。」

と息を乱しながら顔に汗の玉を浮かばる少女がいた。
その少女にクラスの男子の四分の三が視線を寄せた。
理由としては、少女が可愛いからと同着的にシチュエーションがみそである。
息を切らすほど走ってきた少女は汗でうっすらと体のラインが分かる。
それだけではなく、走り乱れた短い赤毛が汗と合わさって淫靡さをかもし出し
青色の目は疲労によってうっとりしているようにも見える。
息を整えるために、小さな口を開け締めているさまは
もはや健全な男子としては色々と大変なことになってしまう。
実際に、クラスの男子の一部に股間をもじもじとさせる人間がいたのも事実だった。

「ふぅ、ちひゃーちゃんおはよう。」
その少女はゆっくりと歩きながら息をついて
席に座っていたツインテール少女に話しかけた。
「お、ほのかか。きょうはもう少しで遅刻やったな。」
「えへへ、まあね。あ、雛森君おはよー。」
「ああ、春日野さんおはよう。」
そう返答をしながら、少女に視線を合わさず少年こと雛森は教科書を机にしまう。
「なんや、クールやなー比野は。」
千早と呼ばれるツインテールは雛森にからかいを含めた口調で話しかける。
「このエロさを見て、何も反応せえへんとは。」
と言いながら千早はほのかと言う赤毛短髪の少女を雛森にぐっと差し出す。
「雛森君が困るでしょ。それにエ、エロくないよ。」
「はあ、自分のことをわかってないなー。そやろ、ひのー。」
「ん、そうじゃないか。」
平静な雛森は鞄から取り出した本を読みながら答えた。
ただ、それは平静を装っているだけだった。
現実、人に気づかれない程度に体がそわそわしていて目は泳いでいる。

「あ、雛森君。それ見てくれてるんだ。」
とほのかは雛森が持つ本を指を指しながら、思春期の少年に迫った。
少年の体が僅かにピクリと反応した。表情もまた強張っていた。
少年の心の中では
ちょっとまって、これは・・・ごくり
などと考えていた。
「ああ、見せてもらっているよ。」
「後で感想よろしくね。」
ほのかはにこりと笑う。
「ああ。」
少年はそっけなかった。
それはクラス中から刺さる男子の羨望と憎悪の視線が原因に他ならない。
それぐらい彼女には人気があった。
少年と話を交わした後に、
ほのかは昨日のテレビの内容や今日の授業等と言った事を話し始めた。
これが彼ら彼女らのいつもの事でハプニングも暴力も無い
実に平穏穏やかな日々を送っていた。

学校を終えて帰宅した後に、少年はいつものトレーニングを行うことにした。
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by piyoppi1991 | 2012-03-15 20:03 | ルート・リード

絵、描いてました。

載せられない事情は特にないけど、そんなに上手くないので
と言うことでお願いします。

・・・あれ?
脳みそが空の状態みたいだ。
何も、浮かばない。
う~ん、今さっきまで寝てたからか?
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by piyoppi1991 | 2012-03-07 22:57 | 雑記
タイトルも付けました。
どれからやるかは不明。
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by piyoppi1991 | 2012-03-02 19:55 | 雑記

おりゃー!

一応・・・一応終わった!
ただし、クオリティに妥協しちゃった。(テヘッ☆ ←疲れてます。
とは言っても、複線が回収してないとか
転から結があっさりしすぎているところぐらいと
自分は・・・自分は!
思っています。
いや、最後の方もずいぶんと風景の記述とか抜かってるしなー
多分、少しずつ変化していきます。読みやすいように。
ただ、終わったんだ・・・
やり遂げました。
頑張りました。
多少、雑にはなりましたが今回ぐらいは褒めてやりましょう。
自分が自分をね?

さて、ほかにも小説の題名も変えました。
君と本を詩う。
・・・
よくね?
特に、詩うのところ
独自じゃね?
かと思ってネットで調べたら

アルトネリコでした。

・・・いやね。
どっかで見た気がすると思ったのよ。
あのね、わざとじゃないよ。
詩うと言う表現
今回の作品としてはキーだったわけだし。
いいよね?
もう、疲れたから無理。
と言うか今深夜よ?
個人的には29日のつもりよ?
・・・文章がでたらめなのも
もう、仕様で・・・zZZ
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by piyoppi1991 | 2012-03-02 09:44 | 雑記

君と本を詩う。 起(1/4)

眼が潤んだ彼女が目の前に居た。
彼女の肩をつかみ、自分のほうに寄せる。
「亮介さん。私・・・」
この言葉を聞き、自分は顔と顔を近づけようとした。
彼女は目を瞑った。

・・・・・・
ニタァ

「なんだよ。窓際で渋い顔をしてたかと思ったら・・・」
「実にきもいな」
同僚の友人二人して、妄想に耽っていた自分に訝しげな目線を差し出した。
「なんだよ、きもいとは。」
「何がって、言われると言い切れないほどだが・・・」
「いきなりにやけ出されると誰だってなぁ。」
「おまえだって、俺がそんな感じだったらきもいとか思うだろ。」
「確かに、そうだな。」
喫茶店の窓際で遠くを眺めていた人が急ににやけ出す。
これは・・・気持ち悪い。
「で、なんでにやけてたんだよ。」
「ああ、ここの近くの本屋のTURUYAがあるじゃんか。」
「ああ、あそこね。」
「ああ、あそこで魔女っ子ミラルン買ってるわ。」
「お前その歳でよく買えるな。どこにあるか知らんが、アニメイロとかで買えよ。」
「それが近くにねぇんだよ。仕方ねぇだろ。」
「おいおい、話がそれてるそれてる。」
と友人Aの暴露をスルーして、話の筋を元に戻した。
「で、どしたよ。」
「そこにさ、かわいい人が居てさ。」
「・・・確かに居るな。性格も良さそうな。」
友人Aは知っている様子で、手であごを押さえてうんうんと頭を振った。
「へー、で?そんなに可愛いのか?」
「それが、なんかこうぐっとくるんだよなー」
「陽樹の人食い講座がまーたはじまっちゃう。ふぅ、とろろでも背中に
_流し込もうか?」
と友人Aは頬付きをして、敵意を顔全面で表していた。
ここまで、いやな表情をされると逆に爽やかな気がするぐらいにだ。
ただ、人食いって言われる程、エロに行じたことはない。
「オタクの嫉妬はみぐるしいぞ。普通4,5人ぐらいはあるだろ?な?」
友人Bは常識的なものだと流すが、それはAへ油を注ぐ行為である。
Aの言葉に、12フレームの反応をAは見せ付け体をテーブルにのりあげた。
その時、下のほうでガンッと鈍い音がした。
「な?じゃねぇよ。俺は今静かに怒っている。」
と言ったAの足はぶるぶると震えている。
「まぁまぁ、閑話休題。足、大丈夫か?」
「それで、どうしたんだ。彼氏でも居るのか。」
「何というかのれんに腕押しなんだよ。彼氏は居ないよ。多分。」
「よし!」
友人Aは満面の笑みと涙目でガッツポーズをしていた。
「ふーん。無口な感じか?そういうの苦手だからわからんな。」
「おいおい、そこはいいところだ。」
「オタクは黙ってろ。」

友人Aと友人Bの喧噪は置いといて、彼女のことを考えていた。
AとBの意見は無いようなものだったので、自分でどうにかするしかない
そこで、どうやって遊びに誘っていくかというプランを練ることにした。
思うがままに行動する方法が一番成功率が高い気はするが、
どうにもこうにも彼女の前では必要以上に緊張してしまうのだ。




 その明くる日、仕事終わり夕暮れの中で俺はTURUYAの前に居た。
居るだけで、喉につっかえそうなほど息苦しくただ店の前に棒立ちしている俺が
何故か可笑しかった。何度か深呼吸をかねた後に店内に入る決意をした。
気持ちは前へ前へのつもりだったが、店に入る足はおどろおどろしていた。
彼女を探すために、店内あちらこちらをきょろきょろと見渡す。
10分ぐらいたった頃だろうか、彼女を探せなかったのであきらめて
店内から出ようと自動ドアに向かった。その時、背後から声が聞こえた。

「お客様。何かお探しものでもありますか?」

彼女が居た。
自然と「君。」って言いそうな自分が居て、気持ち悪かった。
多分、店内できょろきょろとずっとしてたものだから、話しかけられたのだろう。
「え、えっと・・・そうだなー。メンズサムライって無いかな。」
「はい。今日、入荷したばかりでレジの前のスペースにありますよ。」
ニコっと笑っている彼女を見て、気持ちがいっそう浮ついてしまう。
店員スマイルだろうけれども。
「そっか、だから見つからなかったのか。」
「申し訳ありません。今後から両方ともに配置するようにします。」
と非礼をわびる様に辛そうな顔で頭を下げる。

「いえいえ。その、別に気にしてませんよ。」
「ありがとうございます。」
そのほっとした彼女の顔見た瞬間、今日一日満たされた感じがした。
しただけであって、結局客としても話しかけることすら出来なかった。
自分でも情けないとは思った。
ただ、あーだこーだと店内でぶらぶらするのもあれだから帰宅することにした。
 
帰宅した後はカーペットの上に座って、
適当にテレビのリモコンを手に取り電源を入れる。
呆然とテレビを見ながら、彼女のことが頭に浮かぶ。
友人Bはいつも通りに口説けといったが、それは相手が乗り気である場合に限る。
誘い文句を振っても、のらりくらりと避けられたらまるで意味がない。
もちろん仕事中ではなく、仕事外で誘った。


「単純に考えて、あんまり彼氏とかに興味ないとか。それとも俺自体が全くの圏外っ
_て事かな。」

とテレビを目の前にして呆けながら、そんなことをつぶやいていた。






翌日、俺は勤務中に仕事の報告書を上司に提出した。
上司はその報告書を見て、眉をひそませた。
理由は単純に報告書自体にケアレスミスが多いと言うことだった。
いよいよを以て、重症だ。
今は雑用程度の仕事だから大した責任はないからよかったものの、
恋愛がらみが原因で仕事に影響が出てしまった事は問題だ。
このままうじうじと考えていても、何も進展などしないどころか、
仕事にしろプライベートにしろ中途半端になってしまう。
俺はそう思った瞬間、彼女に直接的なアプローチを試みようと決意した。
それから、無駄に仕事へ没頭して今日一日を
のめり込むように過ごした。
 
 日が暮れたころ、「今TURUYA前、そろそろ決める」と友人に
メールで今日中に決着をつけるつもりだと送信した。
自分でも、急だとは思ったが
彼女の態度を鑑みるとただ引き伸ばしにするのはただのストーカと変わらない。
店前で自分でも分からないような微妙な表情を携えていた。
そんな表情のままでフラフラと本屋の中に入る。
最近よく聴く店内でのBGMが妙な緊張感を煽って
この場からダッシュで逃げたくなるような焦燥感に駆られる。
だからといって、逃げるわけにもいかないので彼女を探すことにした。
しかし、店内を2,3回往復したが彼女の姿を見ることが出来ない。
もう一度、店内を見回そうとしたら背後から声をかけられた。

「何か、お探しの物でもありますか?」

・・・違う女性だった。

店内を出た後、俺は夜空を漠然ととただただ見つめていた。
見つめ5秒間終えた後に、地上へ目を移すと燦爛と輝く建物が視界に入った。
躁々とした雰囲気に嫌気がさして、思わず、足下にあった缶を蹴り飛ばした。
缶は2,3回はねた後、行き場を失ったように道ばたで転がった。蹴り伸びた足を
ひっこめた後、溜息を吐いた。結局、どうこうもないので煌びやかな街の中へ、
とぼとぼと帰る他なかった。
家に帰って、結果はどうだったというメールを見た気がしたが
何かをしゃべる気力すらなかったので翌日返すことにして、今日は寝た。
 
問題は、店に彼女がいない日はその日だけでは無かったのだ。
決意した日から、彼女を一度も見ることができなかった。
自分はある種失恋したかのような気分に陥った。
その気分を紛らわしたくて、毎日のようにTURUYAに寄る。
だが、彼女はいなかった。
やがて、焦れてきて店員に聞くようにした。
だが、彼女は辞めたのだという事実を聞くばかり
それでも、情けなくも未練がましくTURUYAによる。
だが、それもまた無意味にすぎなかった…
1週間経った頃ぐらいだろうか、無気力になりつつも
もはや体になじんでTURUYA来店が習慣になっていた。
そろそろ、やめてもいい、そう思いながら足が勝手に運ぶ。
そんな情けない俺の7度目の正直の帰路のことである。
相も変わらず、夜に映えるぎらぎらと輝く街の中で帰っている途中だった。
通り過ぎる夫婦やカップルを視線に入れずに道路の横側に在る店に目を移す。
「はぁ、なんだろうなこの気持ち。今ならストーカーの気持ちすらわかる気がする。」
と物騒なことをつぶやきながら、端端にある店を横目にもそもそと歩く。
しかし、淡々と家へと向かう寂しさに耐えかねて、前方の居酒屋にでも入ろうと
ある店の横を横切った時に、何かが自分の視界に入った。

「え?」
自分の目を疑いたくなかった。
何故なら、横切った古い本屋の前に
彼女が居たからだ。
思わず自分は動転して、振り返って彼女を見るという流れを二度三度と繰り返す。
気が落ち着いたところで、彼女がどういう状況に置かれているか観察する。
彼女は、古い本屋の前で立ち尽くして居た。
その様子は、どこかそわそわしていて不安げな表情も携えていた。

まるで、告白する前の女子のようだった。

自分の中で、嫌な仮説が脳内に敷き詰められていく。
まさか、いや、けれども
といった単語がぽこぽこと頭に湧き出ては思考が停止する。
どれくらい経ったかは分からないが頭が冷めてきて、
今の状態がチャンスだと気づく。
ここで話しかけねば一生会えないという背水の陣でもあるような気もするが。
だからこそ、自分は彼女に話しかける。

「あのー、何かお困りですか?」

それこそ自然体に、言葉は出るときに出るのだ。
「え?あ・・・」
彼女は急に話しかけられたせいかあたふたしていた。
これはこれでかわいかった。
「だ、大丈夫です。す、すみませんでした~!」
と彼女は走り去って言ってしまった。

って、え?

排水の陣、チャンスとともに自分は水に流されていた。
ぱっと見えた光明はそれこそ一瞬過ぎて泣きたくなって来た。
強烈なため息がでてしまいそうになったので、
顔を下に向けたら、あるものが目に入った。

「ハンカチ?」
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by piyoppi1991 | 2012-03-02 09:40 | 君と本を詩う。
彼女が走り去った後に、自分はすぐに帰宅した。
家に着き、手に紐をかけ電気を付けた。
そして、そこに照らされていたのは真っ白のハンカチだった。

自分は机に置いてあるハンカチをしげしげと見つめた。
これが、彼女のものかはわからないけど
「きっかけにはなるんじゃないか・・・?」
と一人でつぶやいた。
しかし、自分のしていることが変質者じみて来ている。
自分でも、恋愛に対してこんなにも臆病だったのかと感じる。
今までは、ただ楽だった。
選ぶことは苦労しても、実行することに苦労しても
考えること事態に苦労したことなどはなかったからかもしれない。
といったことをぐだぐたと考えているうちに
時計の針は午前2時を指していた。
時間を意識した瞬間に、眠気がくわんくわんと被さって来た。
眠気に任せて、自分は明日のことを何も考えずただ眠ることにした。
朝、起きて自分はあの古い本屋で彼女を待ち伏せすると決めたのだ。
もし、このきっかけで何もつかめなかったら身を引くつもりだ。
このまま、ただ長引かせるのはらしくない。

そう思ったからだ。


夕時を迎えいつものように仕事を終えて、あの古い本屋に向かった。
向かう途中、街中を淡々と歩いていると顔に冷たさを感じた。
前を見ると、雪が目の前でちらついてた。
無意識に吐いた息が白かった。
こんなにも、街が寒かったということを今年初めて知った気がする。
コートまで着ていながら、それは変なことだとも思うが
それぐらい、今年は必死だったのかもしれない。
彼女に出会ってもう半年、いまだ決着がついてないことにも
驚いていたりするわけだ。
自分はうーんとうなりながら、ミニュチュアのような建物群の中で
ただ歩いているうちに、目的地に近づいてきた。
しかし、より近づくにつれて腰が引けてくる。
腰抜けめ!
と自鞭しながら、一歩ずつ確かに踏みしめていく。
踏みしめ踏みしめ、前進したらあの古い本屋の看板が見えてきた。
いよいよをもって、決行の時。
歯を食いしばって、片目をつぶりつつ
彼女がいるか確認する。

「いた。」

知らずと、言葉にしていた。
人は思いがけないときに口に出してしまうんだなと思った。
そのときの自分はあまりにもアホ面で
口をぽけーと開いて目は一点
雪の中でそわそわとしている彼女を
呆然と眺めていた。
白に染まるその姿が神秘的にすら見えた。
ガラスに映るアホ面に気づいた自分は、顔を引き締め
彼女に話しかけることにした。

「あの」
「!?」
話しかけると、彼女はわずかに体を動かし縮こまらせた。

「わ、私ですか?」
「うん。君さ、この前こんな感じのハンカチ落とさなかった?」
と白いハンカチを差し出した。
「あ、・・・そうですね。えーっと・・・」
彼女は2,3回あたふたした後、自分に笑顔を向けた。
「あ、ありがとうございます。」
少し、ぎこちないけど。
「いえいえ。それにしてもこの古い本屋に用事でもあるの?」
「えーっと、そういうことになりますかねぇ。」
彼女の語尾やら頭語やらがものすごく怪しい状態になっていた。
その姿が、バイトの時とかけ離れていたので
自分は功を焦ったかと思って、動揺した。

「へー、・・・」
き、きまずい。だけれども、止まるとそこで終わり。
自分の口に栓をせず、そのまま開けっぱなしにした。
「本とか好きなの?」
「!」
この言葉に、彼女の肩口がぴくっとはねかえった。
「ああ、だからTURUYAで働いていたの?」
「へ?なんで知っているんですか?」
と彼女は表情を強張らせて、体制はうしろにそっていた。

「いや、丁寧な客の対応していたから印象に残ってたんだよ。
_1週間ぐらい前の話かな?だから覚えてたんだよね。」
「あ・・・すみません。覚えていません。それにもう辞めたから・・・」
「いえいえ、客の顔なんていちいち覚えていたらきりがないよ。
_それにしても、辞められていたんですね。」
自分でも白々しいと思いながらにも言葉を積み重ねていく。
会話のうちから
彼女が反応を示したように、本が好きなのだとわかった。
そこで、考えた。
本が好きで、本屋の前で立っている。
TURUYAにバイト、そして辞職。
・・・本を見たいだけならすぐにでも入ればいい話。
つまりはそういうことか。

「・・・この本屋でバイトしたいの?」
彼女はまたも肩口をぴくりと振るわせる。
「はい。けど・・・」
「けど?」
「流石に、あの、お客さんが少ないかと」
彼女は本屋をちらちらと見ながら申し訳なさそうに話した。
ふっと、俺は本屋の方を顔だけ動かして見た。
その様子としては、人通りがまるで流れておらず
閑古鳥がここぞと言わんばかりに鳴くであろうぐらいに寂れていた。
しかし、外見だけで判断する必要も無いだろう。
「そういう時は、とりあえず応募しているか聞いてみるといいよ。」
俺はそう言って、彼女の手を引っ張って本屋の中へと一緒に入った。
彼女は俺に寄せられたとき、足の力が入っていなくて
前のめりによたよたと転びそうになっていた。

「すみませーん。」
店に入ると同時に店主に話しかけたが、目の前にあるのは本棚だった。
よくよく周りを見回すと、ジグザグと本棚を配置していてまるで大規模な図書館だ。
実際は、そんなことは無く店内を圧迫していて窮屈な店だった。
しかし、彼女の目は爛々と輝いていて本の虜になっているように見えた。
そんな彼女をよそに自分は店主を探す。
すると、しゃがれた声が聞こえた。

「ん~?客かぁ?」
本棚の横から顔を出してきた老人は若干不機嫌そうな面持ちをしていた。
こういった老人は扱いが難しく、バイトは無理かもなーと思った。
「すみません。ここって、バイトとか募集してますか?」
老人の眼光がギロリと光る。
無愛想な年寄りってこうなんだよな。そうなんだよな。
といわんばかりの模範っぷリを見せ付けた。
「しているように見えるか?」
「いえ・・・えっと。」
「嫌がらせか?」
「そういうわけじ・・・」

「働かせてください!」
そこには、口を結んで両目をぎゅっと瞑った彼女が居た。

「お、お?」
自分は正直驚いた。
よわよわとしていた彼女が大声で主張するとは思わなかったからだ。
「ん~。娘さん。あんたもかい?」
「いえ、元からこの子がここで働きたいと言うことで。」
老人の誤解を解くためにも、即座に説明した。
説明を聞いた後にも、老人のしかめっ面は納まらない。
「何でこんなへなっちょいな店で働きたいと思うのかね?」
確かに。自分もそう思わざるを得ない。
本好きだっていうなら、別にここじゃなくても。

「へなっちょいなじゃありません!この本屋さんはすごいです。」
「どこが?」
と店主のものものしい威圧感はいまだに漂う。
すると、彼女は繊細な生き物を扱うように本を取り出してきた。
「例えば、これです。この本は古い本なのですが虫に食われた様子が
_全然無いです。だから、とても本を大切にしているなって。
_だから、素敵です・・・」
と彼女は取ってきた本へとやさしい眼差しを向けていた。
その姿に、自分は見惚れた。
老人もまた目を奪われたような体だった。

「・・・ふん。金はそんなに出せんぞ。」
と我に返った老人は腕を組んで、静かに話した。
「雇ってくれるんですか。」
彼女はこの発言に反応して、本から老人へと視線を戻した。
「ああ、別にかまわんよ。この本棚はおれにゃちぃととか高すぎる。」
そう話しながら、老人は真横の棚を軽く2、3度叩く。
「そうだ。お嬢さん、あんたの名前は。」
ふと何かに気づいたように彼女へ老人は話しかけた。
「はい!七川うめです。」
「ふむ・・・うめか。」
老体はその名前を口に出して確認していた。
自分は、彼女の名前つまりは七川うめと
ようやく知ることが出来た幸せを七川さんに
悟られないようにかみ締めていた。
「由来とかあるかの?」
老人は考えが纏まったところでふいに七川さんへ質問した。
初対面で名前の由来なんて聞くかと思ったので
自分はこの質問に面を食らった。
当然、彼女も困惑するだろうと予想した。
しかし、彼女は意外な反応を見せた。
「えっと、"梅"にまつわることでいいかと。
_特に菅原さんのエピソードとかですね。」
「ほぉ・・・親ばかやの。」
「私でも、ちょっと思っちゃいます。」
二人の間に、謎の空間が出来上がっていた。
読書する人間同士だと名前の由来を言い合えることが普通なのかと
そして、難なく理解でき合えるものかと自分は驚愕した。
反応に困っているままに、七川さんが視線を合わした。
「あの・・・ありがとうございます。」
と体をもじもじさせながら、照れくさそうに彼女は話しかけてきた。
「い、いえ。よかったですね。」
「あなたの名前は教えていただけないでしょうか。」
今度は、ごく自然に彼女は自分にたずねてきた。
しかし、その聞き方は心地よく、
自分を見つめる眼は翡翠のように綺麗だった。
「文月・・・亮介って言います。」
と思わず声を漏らすように答えた。
「文月さんですか。本当に、ありがとうございました。」
そう話して、彼女はニコリと笑った。
その笑顔を見た瞬間、
体中に血液がまわるイメージが沸くほど自分の体は熱くなった。
今まで、眠たかった日常が一気に開けた・・・
そんな気がしたんだ。
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by piyoppi1991 | 2012-03-01 12:27 | 君と本を詩う。

君と本を詩う。 転(3/4)

「ふぅ」

と一息を入れ、自分を落ち着かせた後に
七川さんから忘れることなくメルアドを交換した。
「えへへ。」
通信した後に、気恥ずかしく彼女は笑う。
「メルアド交換したことがあまりないので、ちょっと照れます。」
そう話しながら、照れ笑顔のまま彼女は頬をかく。
俺にとって、メルアド交換なんて出会いの挨拶みたいな
ところがあったからその反応に新鮮さを感じた。
「へ~、そうなんだ。」
「ははは。そう言えば、この前話しかけられた時スーツ姿でしたよね。」
「あー、うん。こんなんでも社会人ね。君は大学生あたり?」
「大学生です。丁寧語とか使ったほうがいいですか。」
彼女はまじめな顔で俺に問いかけるが、
その真面目さがくすぐったいぐらい聞く姿が可愛らしかった。
「十分丁寧語口調だよ。もうちょっと砕けてもいいぐらいだよ。で・・・」
「履歴書などはいらんが、住所と電話番号ぐらいはおしえてくれんか。」

俺は少しでも会話を間延びさせようとしたものの敢え無くご老人に阻止された。
「はい。何か書く物と紙みたいのものありませんか。」
彼女は自分へ軽く会釈した後、老人の問いかけに返しながら
あわあわとした様子で老人に向かって小走りした。
「このメモ帳と・・・ほれ、鉛筆だ。」
「ありがとうございます。えっと・・・携帯電話の方もですか。」
「いつも電話が通じるほうにしてくれ。」
「はい。わかりました。」
そんな七川さんと老人のやりとりを横目で見ながら、
自分は会話をどう切り出していこうかと言う難題について考えた。

アイデアをひねり出そうとしてから、
数分後に彼女は自分のところへ戻ってきた。
結局、有り触れた回答しか思いつかなかった。
「どんな感じ?上手くいきそう?」
「楽しくやってけそうです。」
彼女は表情を嬉しく輝かせていた。
「はー、本当に本が好きなんだね。」
「う~ん、どうなんでしょう。多分、勉強が好きなんですかね?」
「勉強が好き?」
「といっても、学校でやるような勉強は苦手ですけど。」
「ん?どういう意味?」
「えっと、例えば何で日本は戦争しちゃったとか・・・こうぞくぞくしません?」
「え。」
「あはは、すみません。これ言うと大体引かれちゃいます。」
「それが勉強?」
「え?う~ん、こういった追い詰められた時にでる日本の起源を
_読み解くことが勉強だったりすると私は思ったりするのです。」
「読み解く・・・」
「うわー、やっぱ私口下手だー。」
彼女は発言に自信がもてない様子で、話し方もふわふわしている。
「本にはそういう楽しみがあると。」
「あ、はい!多分、本じゃなくてもいいかもしれません。
_ただ、ネットとか苦手で・・・検索とかは出来ますけど。」
「へー。」
なんだか分からんが、彼女の成りの楽しみ方があるってことだろう。
「だから、本が好きなのか。」
「はい。もちろん、普通に読む分にも好きですけどね。」
と彼女は愛想よくニコニコと笑う。

どうやら、この笑顔には心が穏やかにするといった癒し成分があるらしい。
おかけで、自分の脳内は大分落ち着いた。
今後また、この笑顔に出会う為にもしっかりと"約束"を
こじつけておくことにした。
「なんか、お勧めの本とかあったりする?」
「えっと、何か好きなジャンルとかありますか。」
彼女は目を輝かせて質問に反応した。
「うーん、読みやすいものかな。小説とかでも。」
「・・・、これでいいかな。」
七川さんは本棚から一つ本をひょいと取り出しだした。
そのまま本をカウンターへ持っていき、静かに置いた。
「おじいさん、御会計お願いします。」
「ん。それぐらいなら持って行っていいぞ。」
「駄目です。払うものは払います。」
そう言って、彼女は代金を置いておく。
老人は黙ってお金をレジにしまい、読んでいた本に目を向けなおした。
というより、値段込みで覚えているのか。そいつはすごいな。
「はい。どうぞ。」
「お金・・・」
「他人に勧めるときはお金取らず。です。」
「う、うん。これって、本好きのルールみたいなもの?」
「えっと、迷惑だった?」
彼女の不安げな瞳が自分を覗いてきた。
社交辞令というものをまったく知らない純粋さに驚いた。
もちろん、話題づくりのためにも読む気はあったのけれども。
「いや、全然。ありがとう。面白かったらお金は返していいかな。」
彼女はきょとんとした。
ただ、真意に気づいたらしく笑顔で返答した。
「はい!」


家に帰宅したのちに、七川さんからもらった本を読むことにした。
平成20年の本で恋愛小説だった。
正直のところ、少しほっとした。なんだ、女の子じゃんと。
彼女は、”読みやすい”を汲んでくれていたようで有難かった。
「よし、読むか。ふむふむ。」

見事に熟読した。
話題作りとかではなく、純粋に面白かったからだ。
内容は、
西欧中世の話で罪人に商人の男が殺されかけ
しばらく街に帰ることができなくなった事から始まる。
罪人は男が愛した女に、男は遠くへ行ったと伝える。
女の心は揺れる。
見捨てられたのか。飽きられたのか。
罪人はその心につけこんで女を口説き落とした。
1ヶ月が経ち、
男が帰ったころには女は男に心を開くことは無かった。
そのときに、男が女に最初に発した言葉は
「私は君の名を忘れない・・・か。」
その名が純愛と言う意味でつまりは”愛している”ということらしい。
言葉を伝えた男は苦難の末に、女と結ばれる。
「・・・なんというか、劇とかそういうのに近いな。」
劇だとこの展開はバットエンドに向かいそうだけど、
それをハッピーエンドに変えた作品のように思えた。
平成20年の本だから、今の人に合わせたといった感じかな。
それにしても、この本の面白さは
巡り合わせで恋愛を書いてないことだなーとか
色々考えながら今日は寝ることにした。


翌日、起きた時に朝が何とも爽やかだった。
この気分のままに、足取り良く会社へと通勤した。

定時を過ぎた後、早速七川さんの居る本屋へ向かった。
日が暮れる頃で、通り過ぎる建物郡は黄金色に染まっていた。
着くと直ぐに本を整理している彼女の姿が目に入る。
「やあ。どうだい?」
「あ。」
話しかけた自分に、彼女は気づき
整理していた手を止めてこちらのほうに視線を合わせた。
「今、仕事中だから・・・」
と困った表情をとりながら彼女は話した。
どこか、そわそわしているようにも見えたが。
「えっと、それもそうだね。」
「別にいいよ。客は入らんしな。」
カウンター側から姿は見えないが、老人の声が聞こえた。
「おじいさん、それは駄目です。仕事は仕事です。」
「ははは、なら客の接待だ。そこの坊やが買うかもしれないだろ。」
「そだな。この前の本の代金払わしてもらいたいし。」
「んー。そういうことなら・・・、でいいのかな?」
「ええ。お金を落としているなら客だ。」
「じゃ、これ。じゃら銭はいらないからおつりはいいよ。」
と彼女の手のひらに1000円札を1枚乗っけた。
「は、はい。えっと・・・どうでしたか?」
子供が母親に尋ねるかのような
おずおずとした表情で彼女は見つめる。
「うん。面白かったよ。内容は複雑じゃないけど、
_台詞に一々考えさせられるっていうか。」
「わぁ。」
そこには目を輝かせる彼女が居た。
「特に、罪人が葛藤するシーンで出る台詞とかたまらなかった。」
「"彼女を愛していないのだろうか。"とかですか。」
「いいよね。自分のした行為は彼女を苦しめるが
_それをしないと主人公とくっついてしまう。」
「単純に、それぞれが正しいって言う目線じゃないから
_出る台詞ですよね。」
「そうそう、正に考えさせられる作品だったよ。」
「うわぁ。」
彼女の目の輝きはいっそうと増していた。
さながらその姿は、絶滅したと思われる同胞を
見つけた瞬間のようであった。
それから、会話は積もりに積もる。
元々は話ネタ程度のつもりだったんだが、
もはや”小説”が目的になっていた。

「楽しかったー。」
と七川さんは満足げの表情を見せていた。
「ははは、十分に楽しんだか。」
そう言いながら、本棚の影から老人が現れた。
十分にというのは、今が午後9時だからだろう。
接待もここまで長引けば、成功だな。
「小説でこんなに話し合うと思わなんだ。」
自分でも驚くほど話していたから、思わず言葉が出た。
「ふん、本を通じて会話をする・・・最近の若者をそれをせんからな。」
「ははは、手段が増えただけっすよ。」
「それもそうだな。俺は、本が好きだからな。だから、余計実感するんだろうな。」
「んー、私も割りと実感しますね。
_マルマル動画とか言われてもわからないよって。」
「ここでは俺仲間はずれっすか。」
「いえ、文月さんの本に対する考察、好きです。何時読み始めたとかは
_関係ないと思います。」
彼女はニコニコしながらそんなことを自分に言う。
好きという部分に反応しまいと自分の顔がピクリと動く。
「だから、本じゃなくてもいいからメディアに触れたいなーっていつも思います。
_メクスィとかイイッターとかは使い方分からなくて挫折します・・・」
「当然、俺もわからん。知らんでもよし。」
と老人は胸を張る。
「威張ることじゃないですよ。まぁ、無理にやる必要も当然無いけど・・・」
「ははは、そ、そうですよね~・・・?」
彼女はいまいち自信なさげではあった。
「”それでも、本を愛さざるを得られないのだ。”かな。」
「おじいさんもこれ読んでいらっしゃっていたのですね。」
と彼女は自分が片手に持っている例の小説を指差した。
「まあな。」
「えっと、"それでも、彼女を愛さざるを得られないのだ”ですっけ。」
「そうですね。罪人が最後に主人公へ当てた言葉です。」
「・・・まぁ、それで主人公が手を引くと言う話はあるんだがな。」
と老人は少し物寂しげな顔をして呟いた。
「え、これの元があるんですか。」
自分は聞かざるを得なかったのだ。
「元々、演劇の話さ。」
「へー、それっぽいとは思ったけど。」
「その演劇も見てみたいなー」
そんなことを良いながら、彼女は笑う。
「本にはない。残念だがな。」
この老人の発言を期に、夜も遅いからと言うことで
帰宅することになった。
ふと、時計を見るともう10時。
確かに、女性を帰らせる分には遅いな。
「ほれ、夜道は危険だから。送ってやれ小僧。」
「言われなくてもするさ。いこっか七川さん。」
「はい。おじいさんありがとうございました。」
「ん。」
老人はそう言って、背中を向けて店内へと戻っていく。
帰り途中、またも小説の話題で盛り上げながら
次に貸してもらう本について話し合った。
多分、次は推理小説になりそうだ。
「ありがとうございます。」
「いや、気をつけて。」
「はい。」
と満面の笑みを浮かべて、手を振りながら彼女は
駅のホームへと去っていた。

帰宅した後、今日のことでニヤニヤしていた。
好きな人と話すのはいつも楽しいものだ。
ただ、七川さんが手段を通じての対話にここまでこだわったり
    顔を向き合わせての会話が以外に苦手だったり
    本を見るときの姿勢だったり
がどれも新鮮に映える。
自分が夢に思ったイメージよりも生き生きしていて嬉しいと思えた。
そうか、これが始めて出会った”好き”なんだ。
本当にそう思った。
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by piyoppi1991 | 2012-03-01 12:26 | 君と本を詩う。

君と本を詩う。 結(4/4)

彼女とは小説との事で長く話し語り合った。
老人のため息交じりの中、本屋に良く通った。
彼女は老人に躊躇って、休日に会おうと言うことで
デートみたいなことをよくした。その度、カップルみたいと言うことで
からかったものだ。
・・・だが、まだそのような関係になっていなかった。
あの感動的な語らいから1ヶ月が経っていた。
雪は降らず、梅の花が咲いていた。


そんなある日のこと、いつものように本屋へとおとずれた。
ただ、彼女は居なかった。
代わりに、老人が一人カウンターで本を読んでいた。
「七川さん、休みですか。」
「・・・ああ。小僧か。」
気だるそうな顔で老人は本から顔を上げる。
「何ですか。アンニュイな気分ですか。」
と本をゆっくりと閉じた老人に対して煽った。
煽ったはいいが、古びた書庫もとい店だなの雰囲気に
似た郷愁じみた表情を老人は崩さない。
「ふん。この時期はな。」
「何かあったんですか。」
いつものような頑固爺さんとは違った様子に興味を持った
自分は真剣に尋ねた。
「・・・お前はまだ踏み切らんのか。」
そう言葉を自分に向け、心配するような憎しみような
複雑な目線を自分にやった。
「へ?何のことですか。」
自分は焦った、いや、七川さん以外は気づくはずだ。
彼女に好意を向けていることぐらい。
「後悔するぞ。」
その言葉に、自分は心臓を激しく揺さぶられた。
”分かっているさ。”と呟く前に自分に言い聞かせた。
この関係は、駄目だと言うことぐらい。
「じいさんは後悔したのか。」
この言葉は自然に出た。
出たはいいが、胸を早鐘のように血脈が打つ。
「まあな。」
老人は乾いた笑みをこぼす。
「好きな女が居た。お前と同じだ。俺も本などに興味なぞ無かった。」
「ただな。好きだったんだよ女がな。」
「・・・」
「違う部分は、俺らが付き合っていたということぐらいだな。」
「ただ、何時からか"愛"を語らなかった。それだけじゃ。」
老人は敢えて結果を言わなかった。
そこから続けなかったのは、単純に結末は言いたくなかったからだろう。
言わなくても、容易に想像は付く。
「言うさ。」
"何時も"そのつもりだった。
「そうか。」
と老人は冷笑を自分にたたえる。



これが転機だった。
この出来事から彼女との会話が妙に合わない。
はまっていた歯車がずれにずれて、どうにもならなくなった。
彼女が嬉しそうに小説の話題を持ち出してきても
うまくしゃべることが出来なくなった。
多分、彼女も気づいたのだろう。
ある日、挨拶も交わさなかった。

そして、自分は本屋に出向くことは無くなった。






日が過ぎて、仕事である出版所に訪れていた。
彼女と会わなくなって1週間も経つ。
自分の愚かさに心が燻される。
最低限の覇気も無い。
まさに、失恋そのものだった。
いや、失恋は失恋でも
初恋の消失感なのだろう。
言葉で出したわけじゃないけど、
もう負けた気になっていた。
こんなことも初めてだった。
彼女との関わりは苦しいことも含めて始めてづくしだった。
そんな無機質な状態でも仕事は出来た。
いや、こんなときだからこそ違う何かに没頭せざるを得なかったのだろう。
作り笑いを構えて、出版社の受付でアポイントメントの確認を取る。
了承を得たところで、指定された場所に向かった。
着いて直ぐに、ありえない風景がそこにあった。
「言えんかっただろ?」
と本屋の店主がそこに居た。
目を疑った。何故と思う前に取引先の相手が自分に尋ねた。
「文月君は先生と知り合いなのですか。」
「は、はい。」
「たった今まで、先生と原稿の期限に話し合っていましてね。
_それで、文月君が来るという事を偶然先生が聞いてですね。」
「すまんが、時間をくれんか。藍森君。」
「いえ、彼との取引はほぼ決定事項ですので
_少し待って戴ければと存じますが。」
「わかった。小僧、逃げるなよ。」
老人は部屋を出て行った。
何ともいえない気持ちだった。
沸々と出る疑問を抑えつつ、あらかじめ決められていた通りに
事が進んで、無事取引が終わった。
取引先の相手は、先生によろしく言っておいて下さいと
一言残して、部屋を退出した。

約束どおり特に逃げずに出版社を正面から出ると、
ベンチに座った老人がこちらを見た。
「で。この様か。」
老人はあの時の冷笑を再度自分に浴びせた。
何もいえなかった。
「嬢さんはどうするんだ。」
神妙な面持ちで老人は自分に尋ねる。
特に攻め立てるわけでもなく
特に哀れんでいるわけでもなく
ただ、尋ねた風であった。
「・・・伝えたい。」
「そうか。”何時も”なら今言えばいいんじゃないか。」
老人は淡々と話す。
「分かってて!分かってて、言ってるでしょう・・・」
過去の話を聞いたからこそ、感情が押し寄せるように零れる。
「そうだな。その通りだ。分かっては居る。
_だからこそ、今それは乗り越えないと駄目だ。
_貴様はまだ"名を覚えている"だろう?」
この言葉を聴いたとき、気にかかっていたことが解決した。
「そうか・・・小説の元ネタはあんただったんだな。」
「主人公は報われなかった・・・がな。」
手遅れだった。愛をささやくには時間が経ちすぎたから。
それが老人の物語の幕が終わったときだったのだ。
その事実が鮮明に浮かぶほど、自分の今と重なる。

進まざるを得ないが、結局ふりだしだ。
彼女にどう接していこうかわからなかったあの時と一緒だ。

分からない。

・・・彼女は本が好きだった。
だから、自分は本を読んだ。
読んで彼女の世界に踏み入れた。
しかし、それを利用して
その世界を踏みにじった自分に権利なんてない。
そう思えば、思うほど自分の足かせを重くする。
もう何も出来ない。
そうとしか思えない。
いや、今思えばあの主人公もそうだったなのだろう。
どうしようもなかった。
愛を語ろうが、女の前では全て嘘に代わる。
戯言に代わる。
けど・・・
あきらめなかった。
女の前で、愛を詩い続けた。

「なら、そうしよう。」

自分は小説の主人公のように駆け出した。
駆けても意味ないかもしれない。
それでも、駆ける。
彼女の元へ。
伝えたい。
これからも。
君と本を詩いつづけたいんだ。
そう伝えたくて・・・
あの本屋の前に立っていた。
息が乱れ、体全体が重く感じた。
当然、疲労だけではないと分かっている。
「気おされるな。」
と声に出し、店内へと入っていった。

「いらっしゃいませー」
彼女は店員スマイルで自分を迎えた。
けれども、自分であることに気づいてから
その表情を曇らせた。
「ごめん。困るかもしれないけど・・・」

彼女の前で、一息すって整え僕は本を詩う。

「僕はうめという名を忘れない
_一度、君を好きじゃないとごまかした。
_けど、それでも僕は
_君のことが好きなんだ。
_だから・・・」

罪人はここで辞めた。
ならば、続きを詩おう。

「付き合ってくれ!」
それぐらいしか思いつかなかった。はは、まだ本読み足りないかな。

「あはは、大胆なアレンジですね。」

僕の言葉に、彼女は微笑んだ。
微笑んだ後、彼女もまた一息すって本を詩う。

「あなたの愛を信じます。」









それから3日が経った。
彼女との日常を思い出してニタァと笑う。

「おいおい、きもいな。」
と友人Bが想像に水をさす。
「なんか、順調そうだな。」
友人Aは口をニタニタとさせながら、俺をからかう。
「それほどでも。」
からかいには、余裕で返されることが一番辛いだろうと思う俺は
悠々と返答する。
「はあ、つまんね。けど、あれだ。おめでとー」
見当外れて、友人Bに一番ダメージが大きかったようで
何とも複雑な表情で俺を祝ってくれた。
一応、彼は俺が落ち込んでいた時に最も手助けしてくれた。
何といっても、俺が彼女へ駆けた時に
仕事上で時間を稼いでくれたのは正に彼だった。
「運がよかったよ。」
俺はしみじみと思う。
もし、彼女に好意を寄せて行動する男性が居たら危なかっただろう。
「だろうな。行動遅すぎ。」
友人Aはファミレスの机をトントンと叩き俺に辛口な評価を与える。
「だな。」
と俺は相槌を打つ。
「しかし、ま、よかったよ。」
どうやら、Aも心配してくれたようだった。
「さて、俺に女を紹介する作業に戻ろうか。」
ここで、友人Bの謎の要求が入った。
そろそろ、2次元に浸る脅威性に気づいたのだろうか。
「んな女はいねぇよ。ナンパでもしてろ。」
「それが出来たらお前らと一緒にいねぇよ!」
「なら、家に引きこもってろ。バーカ。」
「ああ!?」

友人AとBの喧騒をよそに自分は新しく得た日常に満足していた。
友人を含めた大切な物に初めて気づかせてくれた彼女に感謝している。
・・・いや。
これからも、か。
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by piyoppi1991 | 2012-03-01 02:11 | 君と本を詩う。