適当に妄想小説やキャラ絵を 垂れ流したり躊躇したりする そんなブログでございます。


by くるひよ
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カテゴリ:Pilgrim( 5 )

頭が痛い。
カーテンを閉め切った部屋の隅端で自分は頭を擡げながら
痛い理由を考えてみる。

・・・
・・・
・・・

あの違和感のせいであろうか。
昨日、大咲という人物の家から出て以来、妙な違和感が頭をちらつかせる。
違和感と言っても、彼女の家で起きた出来事を並べてみると

なんてことはない。

彼女の親がいないこととただ台所の中に黒い穴があっただけだ。
多分、彼女もそう自分に言い聞かせたのだと思う。
しかし、あの空間はあまりにも現実臭くない。
例えるなら、廃墟。
当然、彼女の家は廃墟などではない。ただ、それぐらいぞっとしたということだ。
広野はこの件についてどう関わっていくつもりなのだろうか。
自分としてはできるだけ関わりたくないような気がする。
様々な疑問を抱えながらのっそりと立ち上がり学校に行く用意をしたが、広野はこない。
理由としては、大咲の家の周りに関する情報を集めこの件に関して急速な対応を行うために学校を休むと言うことだ。
このまま特に行うこともないから、ドアノブを回して学校に向かうことにした。

学校に着くと広野は当然だが居なかった。
その代わり、顔が青ざめている大咲が居た。おそらく、彼女の両親はあのまま帰ってこなかったのだろう。
そんな彼女を見て、一人の女子が話しかけていた。
「よう瑠璃。なにしょぼくれてるの?」
「千夏ちゃんか。ちょっとね。」
「何だい?お母さんに怒られでもしたのかな。」
「そういう訳じゃないよ。気を遣わせちゃってごめんね。」
「何を言ってるの友じゃないの。」
大咲はそうケタケタと笑う千夏という女子を見ながら
ふと何かを思いついたような表情を浮かべた。
「そういやさ、誘拐されていた男児はどうなったの千夏ちゃん。」
「え・・・?何、その話?初耳だけど。」
会話の後、大咲はよりいっそう表情を曇らせていた。
そして、いつも通りの授業がすべて終わり、HRが済んだ。

「ばいばい」「じゃあの、瑠璃。」

彼女は千夏という女子と別れを告げた。
しばらく、彼女は席に座り何もせずにいた。
人気は少しずつ消えていき、やがて、彼女と自分の二人だけになった。
彼女は一つ息を吸い、ふぅーと息を吐いた後に
寝伏せていた自分のそばに寄ってきて尋ねた。

「・・・・・山内君は?」
「君の両親の誘拐について調べている。」
「そっか。」

それだけ聞くと、彼女は背を向けて去ろうとした。
しかし、そのとき自分の胸にちくりと何かを感じた。

「君の両親は大丈夫だよ。」
思わず僕は話しかけていた。

「・・・何でそう思うの?」
彼女は背を向けたまま問い返した。

「両親を覚えているから。」
僕は彼女の顔を見た。驚いた顔をしている。
「僕だけじゃないさ。君の友達もだ。」
「どういう意味?」
彼女は驚きつつ、不思議そうな顔で僕を見つめた。
「神隠しって知っているかい?」
「都市伝説のこと?」
「いや、伝説の事ではない。この手の誘拐の事を指しているんだ。」
「で、なんで神隠しと呼ばれるのか分かるか?」
「・・・・・・・・・・・いや、分からないけど。」
真剣に長考した末、そう答える。
「単純だ。神様でもないとこんな事は出来ない。」

「誘拐された人間をすべての人間が忘れてしまうんだ。
     どんなに近しい人間でも、親だろうとね。」


「そんなことあり得ない!!」
自分の返答に焦りを含ませたような表情をした大咲は自分の机を両手で勢いよく叩いた。誰も居ない教室に大きくその音は響いた。

「なら、君は4日前にこの町で起きた男児誘拐事件をおぼえているかい?」
「・・・!本当に起きたことだっていうの!?」
「君と話していた女子が証人だ。もう起きていない事になっているんだよ。広野が調べた事に言うには、男児の両親は今日の朝まではおぼえていた。しかし、今となっては完全に忘れきっている。それに加えて、昨日までその二人は精神障害者として診察され、後もう少しで精神科の病院に入院されるところだったらしい。」
「それが本当なら、可笑しくない?何であなたが覚えているの。」
「自分だって覚えているわけではない。広野がたまたま見付けた偶然。広野が持っていたデータとの不釣り合いから客観的に生まれた事実。どうやら、神隠しと最初から決めて、一歩離れたところから誘拐事件を捜査すると、データだけは残るらしい。」

「・・・よくわからないけど、この誘拐事件は情報としてだけ残るってこと?」
「まぁ、そういうこと。」
「そんな訳の分からない無いものよく終えるよね。」
と若干あきれているような表情を含ませた顔でこちらを見た。
「だって、君みたいに困っている人が"いた"訳だからと広野は言っていた。」

それを聞いた途端、彼女の表情が曇り、自分に向かって言葉を何回か詰まらせたが、意を決したかのように話しかけた。

「・・・・・・・・・・・・・・・私が忘れてなかったらお母さんやお父さんが生きてるってこと?」
「多分、な。」
「そっか。」

彼女は小さく頷き、両手をぐっと握った。
体をぐっと振り返し、教室の出入り口に向かって歩いた。
そして、出入り口でぴたっと止まった。

「ありがとう。立花君。」

とまた自分の方に体を振り替えり戻して、ニコッと笑った。
礼に返事する暇もなく、彼女は教室から出ていった。
何とかして元気づけることが出来たようだ。今さっき言っていたことが嘘でも・・・まぁいいだろう。嘘をついたのも初めてだったが、どうやら彼女はだまされてくれたらしい。
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by piyoppi1991 | 2011-06-20 23:00 | Pilgrim
 広野の手を取った彼女と広野、自分は彼女の家から出た。
 其処にあった事実に互いが何かを感じて
 脅迫的な沈黙に苛まれていた。
 そんな沈黙の中で何歩か歩いた後、広野は彼女にこう提案した。

「あのさ、あの家にはしばらく戻れない気がするんだ。だから、
 びっくりするかもしれないけど僕の家に泊まらない?」
 
 当然、彼女は驚いた。

「へ?いや、・・・」

 このあと、きまずそうに彼女は顔を伏せた。
 その様子を見た広野は彼女の態度を察してこう言った。

「ま、一つ屋根の下って感じではないけどね。
 僕の家って無駄にだだっ広いんだよね。」

 と広野は肩をすくめた。
 自分はたまに入るから知っているが、広野の言う通りに住処は広い。
 東京ドーム発想法を使うなら、大体3、4個分ぐらいだろうか。
 当然、そこにあるのは家だけではなく、森林や池などもある。
 おそらく、広野の家は実験場を兼ねているのだろう。

「え、けど・・・まだ、分かった訳じゃないから・・・ごめんね。
 でも、心配してくれてありがとう。」

 と彼女は広野の誘いを断った。
 そして、広野の手から手をすり抜け、自分の家へと戻っていた。
 彼女もあの妙な気配に勘づいてるはずなのだが・・・
 とても強い意志を持った人間のようだ。
 完全に見送った後、広野に呼びかけた。

「・・・いいのか?」

「いいも何も、当然断るだろうね。」

 と一段落と言わんばかりに肩の力を落としていた。
 背中を見せたまま自分にそう答えた。

「・・・当然と分かっていて、誘ったのか?」

「餌は餌らしく振る舞ってもらわないとね。
 下手に手助けをして、向こう側に勘づかれたらまずいでしょう?」

・・・向こう側?その意味と真意がいまいちとらえれなかったので訪ねた。

「・・・相手が誰かわかっているのか?」

「全然!わからない!ただ、カクトが言ったように彼女を見張っていたら
 ひょっとしたら敵さんしっぽを出すかもしれないでしょ?」

「なら、なんで誘ったんだ?」

「そりゃぁ、打診だよ。いつか、彼女ごと抱き込まないといけない場面が
 でてくるだろうから、布石をうっておかないと・・・って」
 
 と広野は急に振り返って、自分の方を見てニヤニヤし出した

「なんだい。カクト君、大咲さんのこと随分と気になっているじゃないか」

 そのことについては自分でもわからなかった。
 ただ、自然と関心が向いていた。そんなことを言語に出すのは
 憚れるので、自分は黙ったまま月の方を眺めた。

「・・・」

 そして、彼女と出会った夜は明けたのだった。 
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by piyoppi1991 | 2011-06-10 23:07 | Pilgrim

第1話:「Ache」

ギギィ・・・・

 頭に締め付けるような感覚を感じて、自分は目覚めた。
それは自分の意識を断続的にさせる。
が、この感覚に集中してしまって、妙に頭が落ち着かない。
しかし、それは一瞬の出来事で次は逆に意識が朦朧とする。
 
 自分は目を閉じた。

ドンドンドンドンドン

 ドアを叩く音がしたので、自分は再び目覚めた。
「おーい、まだ寝てるのかー起きろー」
 玄関からそんな声が聞こえた。
ゆえに体をもぞもぞと起こし、暗い一室の玄関に目を据える。
そして、この声には聞き覚えがあった
「・・・・広野、か?」
「そうだよ。起きてはいるのか。」
「ああ。」
 そう返事しながら、ドアの方へと歩く。
「入るぞ。」
「わかった。」
 と自分はドアを開ける。

ガコッ!

 開ける拍子に何か音がしたが、そこにはだれもいなかった。
 だから、順当的に足下を一応見てみた。

すると、そこには男がうずくまっていた。

「「入るぞ。」と言って同時に開ける阿呆がいるか!」
 と男は頭を押さえながら、自分にそう言ってくる。
「阿呆ってyou?」
「youだよ!」
 と自分の方に指を指してくる男がいた。
「ほかに言うことがあるだろう。」
 その男こと山内 広野(やまのうち ひろの)が眉を眉間に寄せている。
「学校?」
「あぁ、かみ合わない・・・いや、まぁ、うん。ソレが本題だけどよ。」
 その眉をよりいっそう眉間に寄せて、手の甲を表にして振る。
「まだ、遅れないけどさ。とっと行くぞ。」
 その男はすくっと立ち上がり背を向け、手を来い来いと振る。
「わかった。」
 自分はそう言って、カーテンを閉め切った薄暗いアパートの一室から出た。
そのあと、広野が何か言っていた気がするが意識が朦朧としていて
聞き取ることは可能でなかった。




キーンコーンカーンコーン




 チャイムの音が響き、机にうつぶせになって寝ていたことに気づいた。
 しかし、意識が明確になっていないため、もう一度目を閉じることにした。
「カクト!今日は休みだって言ったろう!」
 いつもより大きく張っている声が自分の耳をつんざいた。
 この声はおそらく広野だ。
 ただ、何故いきなりに大きい声を出したのか理解出来ない。
「」
 顔をゆっくり上げて、広野の顔を見てぼけてみた。
「多分一緒だ。行くぞ、今日は忙しいんだ。」
 広野はそう言いながら、自分を引っ張り出した。
 だが、ヒマラヤとアルプスの共通点など山という点しかないと思うのだけれども
 ”ツッコミ”といわれるものは飛び交ってこなかった。
 そして、そのまま教室をずるずると引き摺られながら出た。
「あのなー、今日学校くる途中話しただろう。」
 広野は教室から出た後、自分にそう話しかけた。
 ・・・あまり覚えていない。
 意識が朦朧としていたせいか、しっかりと話を聞けてなかったからと思う
「・・・・・・」
「・・・ひょっとして、聞いてもいなかったのか。なんかぼぉーっとしてたし。」
 自分はコクリと頷いた。
 そんな自分の反応を見て、広野はふぅーっと息を吐いた。
「えっとな、最近多発している事件があるだろ。」
 広野はこう促してきたので、自分の記憶から探ってみた。
 最近、多発、事件、このキーワードから特定できる情報は自分の中で一つしかない。

 ”神隠し”のことか。

 自分は理解したと同時にこう話した。
「・・・・神隠し。」
「そうそれだよ!」
 と広野は自分を勢いよく指さした。
「でな、今日は午後が休み。だから、その午後を今回の事件の探索にあてるって
 言わなかったけ。」
 自分の不整合だった記憶がまとまった気がした。
 ゆえに自分は首を縦に振った。
「よし。なら、行くぞ。」
 広野はそう言い放った後、共に自分と学校を出た。



 自分と広野は学校を出た後、捜索をし続けた。
 そのうち日が暮れ始めた。が、当然何も見つからなかった。
「・・・根拠がないと、何も見つからない。」
 思ったことをそのまま口に出した。
「いや、咲夜さんがここらへんは怪しいってメールを送ったんだよ。」
 咲夜、広野の家の自律型ロボットの事か。
 彼女の場合、機械であるから、間違った情報を出すとは考えにくい。
 けれども、今いる場所はただの路地である
「・・・・・・」
「うーん、参ったな。」
 広野は腕を組んで、顔を下向かせ言語をぽつぽつと小声で発している。
 自分はもう一度周りを見渡した。
 家、壁、紫の空、壁、家、電柱、人
 ・・・・人?自分の視界に入ったものを見直した。
 其処にいたのは電柱に体を預けるように倒れていた人だった。
 自分は思わず広野の二度三度肩を叩いた。
「ん?」
 広野は振り返って、自分を見た。
「・・・人。」
 自分はそっと人の方向に指さした。
「人?」
 広野は自分の指先をたどって、人を見た。
「・・・大咲さん!?」
 広野には見識のある人だったらしく、広野は急いで駆け寄った。
「やっぱり、大咲さんだ!」
 その後、広野は大咲という女子に何度も呼びかけ続けた。
 彼女はまぶたが僅かに痙攣していた。
「大咲さん!大咲さん!」
 何度かの呼びかけにようやく彼女は瞼がゆっくりとひらいた。
 だが、視点がゆらゆらとゆれ意識がはっきりとしていない。
「だいじょうぶ!?大咲さん!?」
 この呼びかけに彼女は目が覚めたようだ
「山内君?」
 彼女はくぐもったような声で広野の名を呼んだ。
「やま、山内君。」
 意識がはっきりしたせいだろうか?
 彼女の表情が変わった。
 そして、目から何かが落ちた。
 それは涙だった。
 自分は涙を見た瞬間、何か痛みを感じた気がした。

「大咲さん。何があったの?」
 広野はそんな彼女に対して冷静に対処した。
「・・・なんでもないよ。ごめんね、いきなり泣いちゃって気持ち悪かったね。アハハ」
 そんなこと言ってても彼女は涙声だった。
「・・・・」
「・・・親がいなかっただけだよ。何か怖くなっちゃってさ。」
「そっか。ならさ、一緒に行こうよ。もう夜だしさ、女の子は家に送るものだろ?」
 と広野は笑ってそういった。
 彼女は大きく深呼吸をして、広野を見つめた。
 そう思ったが、彼女の視点は自分に移っていた。
「うん」
 と彼女は広野を見直して言った。
「なら、行こっか。」
 広野がそう言って先導していく。ついでに自分も同意する。
 そうして、彼女の家に向かうことになった。


 
 しばらくして目的地にたどり着き、広野は家に入るように促した
 しかし、彼女はその場にはりついていた。
 自分も何かそこに貼り付けられる様な違和感を感じた。
「入らないのか?たしかに親とかはいなさそうだけどさ。あ!鍵が掛かっているとか?」
 と広野は聞く。
 彼女は静かに顔を横に振った
「ごめん。何か抵抗を感じるんだ。」
「ならさ、ココまで送ったお礼として家でお茶もらってもいいかな?」
「アハハ。いいよ。立花君もどう?」
 一瞬思考が停止した。こういうとき、広野マニュアルをたよることにしている。
 たしか・・・誘いには素直に甘えるだったな。
「・・・・・・言葉に甘える」
 と自分はつぶやいた。
「ならさ。先に入って先導しようか?」
 と広野はニヤニヤしていた。きもかった。
「お願いするよ。」
 彼女は広野の提案に乗るようにしたようだった。


「おじゃまします。」
 広野は挨拶しながら玄関に入っていった。
 自分も足を踏み入れる。
 ・・・・
 体中に汗が噴き出るような感覚がした。
 広野も似たような感じだった。この感覚に自分は覚えがある。
 そう考えていると、広野は歩みを進めた
「・・・い、行こっか。」
「う、うん。」
 微妙な緊張が空気に張り詰めている。彼女は電気をつけながら、台所に向かう。
 台所に着いたとき、そこには黒い穴がぽっかり空いていた
「見間違えじゃなかったんだ。」
 彼女は座り込んでしまった。
「これは何だよ。」
 広野があっけに取られていた。
 だが、自分は確信した。これは"神隠し"だと。
 それをまず、広野に伝える必要性を感じた。 
 だから、とりあえず廊下のほうに広野を呼びつけた。

「広野、こっちに」
「・・・これって、あれか?」
「そう、だけどそれだけじゃない。」
 広野は眉をひそめ、腕を組んだ。
「それだけ・・・じゃない?」
「おそらく、今回のターゲットは大・・・」
 名前忘れた。
「大咲さんだよ。カクト。・・・何故そう思う?」
「この黒い穴、どこかで見覚えがある。もっと言えば、彼女の両親と
 思われる気配が消えたはずなのに、寒気に近い気配が残っている。」
 この寒気にも似た気配、これは殺気だ。
 戦場に漂う気配に似たような殺気、狂気のたぐい。 
「・・・黒い穴。この寒気・・・」
 広野はあごを手で押さえて、しばらく思考にふけていた。
 ふけり終わった後、広野は自分に視線を合わした。
「カクト。今回の件は俺たちが預かった方がいいと思うか?」
「わからない。ただ・・・」
「ただ?」
「”神隠し”に近づくためには彼女をかくまう必要性がある。」
「彼女を狙っている・・・という仮定が成立しての話だけども。」
「エサか。何にしろ、それしかないよね。助けるためにも。」
 と広野は覚悟を決めたらしく、彼女のところへと向かい話しかけた。
「大咲さん。」
「これなんだろ。わかんないや。」
 彼女の目は動揺と疑惑で大きく揺れていた。
「いいかい。大咲さん。この状態は俺が何とかする。」
「・・・何も起きてないよ?多分さ。何か急用が出来たんだよ。」
 彼女の声はどこか浮ついていて、何を意識しているのかも分からない状態だった。
「だから、ほら!」
 広野はそうはっきりと言って、彼女に手のひらを向けて伸ばした。
「・・・」
 彼女は半信半疑、いや、どちらかというと半分知らず半分知っているという状態。
 感覚的には明らかに変だと分かっているけど、常識がそれを邪魔している。
 だから、彼女は動けずにいた。
 そんな時、彼女は自分に目をあわしてきた。
 懇願にも似た目だった。
 自分は思わず、頭を縦に振った。
 それを見た彼女は決心して、広野の手を取った。
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by piyoppi1991 | 2011-05-04 22:13 | Pilgrim

プロローグ2

 キーンコーンカーンコーン
午前中の授業が終わる鐘の音がした。
先生が教室から出て行くと私は背伸びした。
この後はたしか授業が無くて部活し放題、ひゃっほい。
それは千早ちゃんが言いそうなことで
「おなかが空いたなー」
 同時にお腹がくーとなる。
いまは部活よりお弁当、剣道の防具よりもいい意味で香ばしい匂い。
お腹をさすった後、私は手をかばんの中にいれた
「るり、御飯食べよー」
 お弁当を手で模索しているときに千早ちゃんが片手にコンビニ袋をぶら下げながら
私に向かってくる。
そんな時

「カクトー!今日は休みだって言ったろう!」

こんな声を聞いた
その方向には男子生徒があわてた様子でいた。
「お、ヒロノだね」
千早ちゃんが彼を見ながら言う。
どうやら、ヒロノこと山内君は机に対して
俯せになって寝ているカクトこと立花君に話しかけていた。
「ヒマラヤとアルプスって一緒?なんか語感似てるよね。」
寝ぼけていた。
ちなみに語感は母音すらあっていない。
「多分一緒だ、行くぞ。今日は忙しいんだ。」
山内君は立花君を引っ張りながら教室を出て行った。

「今日なんかあったけ?何か見逃していた?」
と千早ちゃんが吃驚した様子で私に質問してくる。
「多分、何もないと思うよ。」
「・・・ま、いっか。そういや、ヒロノ剣道強いんだよね。」
千早ちゃんは悔しそうに目をぐっと瞑り、握りこぶしを作っていた。
「そうなんだ。」
「強いよ。体育の時間で模擬したんだ。」
「るり以外に先の先を入れられたのは初めてだよ。」
「手も足も出なかったんだ」
「ま、最初だけだけどね。」
と胸をエッヘンと張る。
「なら、山内君は何でも魔人だね。実力テストとかもトップだったし」
「うん、その上女にももてやがる。なんて奴だ。」
「千早ちゃんも女だよね。」
「ま、付き合っている友達がつりあってないよね。」
「立花君のこと?」
「そうそう、いつもむすっというか、無感情というか。」
「たしかに目立たない感じだけど。」
「うむ。けど、なんか怪しいんだよな。」
「え、何が?」
「・・・最近起こった事件知ってる?」
最近起きた事件?私たちの町は平和なはず、いや平和だと思う。
事件っていったら、変質者が現れましたよ。ってぐらい・・・
「ん、誰か変質者に襲われたの。」
「え、男児誘拐事件のことだよ!知らないの?」
・・・・・・・男児、誘拐。そんな事件はあったような気がする。
けど、ずいぶん昔のようなことだと思った。
「えっ、それって何時の話?」
「一昨日ぐらい。私たちの町で事件は滅多に起きないから、よく覚えているよ。」
「一昨日?」
「うん。」
「それにね、何の痕跡もないから・・・”神隠し”って呼ばれてるらしいよ」
神隠し。と呼ばれるのは尾ひれがいっぱいついたからだろう。
誘拐というのも多分その尾ひれだと思う。だって、記憶にないもん。
「へー、神隠しね。で、山内君がそれにどう関係してるの。」
「うん、それがね。広野はそのことについて探っているんだって」
「それまた何で。」
「わからないよ。ただ、必死だって事は分かるけどね」
「へー、千早ちゃん。さっきから思ってたけど、山内君のこと好きなの?」
「ば、ばっかろー。んなわけないっしょ。あいつとはライバルだよ!」
と特に照れた様子もなく、誇らしげな顔をする千早ちゃんが其処にいた。
本当にライバルのつもりでいたようだった。見当が外れたかな。
「ライバルのことを調べるのは当然のことさー」
「ライバルって、剣道の?」
「ん、だよ。広野は強いからな。」
と結局、そんな同学年の男子の話をしながら昼ごはんを食べた


御飯を食べた後、私たちは部活をした。
千早ちゃんには一本も取られずに終わった。
「なんでだろ?るりぴょんから一本が取りずらい」
なんだか変なあだ名が付けられていた。
「んー、手品のネタが分からないと魔術見えるでしょ?それだよ」
私はそういってごまかした。
「いや、意味分からないから」
千早ちゃんは納得しない顔でぷくーとふくらました。
話し続けていると部活の話から食べ物の話になったりと

そんな日常の話。
 
「じゃあねーるりー!」
「じゃあね千早ちゃん」
やがて、いつものようにお別れして帰宅する。
ふと、空を見上げるとその色は
赤とも黒ともおぼつかない紫色をしていた。
そんな空の色に私は何故か身震いをした。
ちょっと、怖くなって歩みが速くなる。

けど、これもいつもの日常。

「ただいま!」
いつもより少し声が大きくなる。
声が冬の夜のように響き渡る。そして、家のなかの明かりもついていない
まるで、最初から誰も住んでいない冬の夜を錯覚した。
何がそういう衝動に駆られたかは分からない。けれども、私は家の中を走った。
廊下、ドア、廊下、中庭、干されている洗濯物、ドア。
 
 そこまで、人の気配すらしなかった。ドアノブに手をかけた。
 
薄暗いダイビングルームが其処にただあった。だれもいない。いない。

 親が単純に買い物に行っているだけかもしれないのに私は焦っていた。

そして、台所によろよろとたどり着いた。

 胸の動悸がおさまらない。吐き気までがする。

ドクンドクンと体中が脈を打つ。私はゆっくりと台所全体に視点をあわせた。

 台所はシンクから壁まですべて黒い穴でぽっかり空いていた。

まるで、お母さんがこの黒い穴で食われたようだった。

 あまりもの不安に私はお母さんに電話する

繋がらない・・・・・、
家の中でお母さんの携帯の音がした。

 お母さんは出かける時はどんなに小さい用事でも携帯を持っていく。

何かがおかしい。

 私は焦り、お父さんにも電話する。繋がらない。

私はゾッとして、家から飛び出した。

 どこに行けば良いかも分からないままに走っ。た

疲れて電柱にもたれるように座り込んだ。

 疲労した体に急激な眠気が襲った。

そして、私の意識は途切れた。








「だ・・ だいじょ・・」
何か声が聞こえる。
「だいじょうぶ!?大咲さん!?」
ハッとした。その声の持ち主は
「山内君?」
うわさの彼だった。いまさっきのは夢?頭がぐちゃぐちゃとしている。
けれど、アスファルトの妙な冷たさがこれが現実だと生々しく伝えてくる。
「やま、山内君。」
思わず涙が出た。それでねじが外れたのかもしれない。
私は嗚咽を漏らしながら、涙がぼろぼろと流れた。
自分でも良く分からなかった。ただ、家に誰もいなかっただけなのに
 
私は何故か混乱していた。

「大咲さん。何があったの?」
気を取り戻してきた私に心配そうに山内君が尋ねる。
「・・・なんでもないよ。ごめんね、いきなり泣いちゃって気持ち悪かったね。アハハ」
そんなこと言ってても私は涙声だった。
「・・・・」
山内君は私をじっと見たままだった
「・・・親がいなかっただけだよ。何か怖くなっちゃってさ。」
「そっか。ならさ、一緒に行こうよ。もう夜だしさ、女の子は家に送るものだろ?」
ニカッと山内君は笑ってそういった。
私は息をすうーと吸って落ち着いてから山内君の目を見ようとした。
その時、私の視界に他の人が移った。
多分、あれは立花君だ。おそらく山内君と一緒に出かけていたのだろう。
そう意識した時、彼と視線が合ってしまった。
声を掛けてくれたのは山内君なのに私は彼に同意を求めるように
「うん」
と言った。
「なら、行こっか。」
山内君がそう言って先導していく。後ろの立花君も軽く頭を下げ同意したようだった。
「山内君、私の家知ってるの?」
冷静になった私はこんなツッコミを入れることが出来た。


 
しばらくして家の前にまた振り戻った。
私は見上げた。空の色は黒だった。紫よりは多少ほっとした。
だけど、体が重い。疲れた時のような重さではなくて
まるで何か体中を糸で引っ張られているような重さ
そんな状態を、山内君は不思議そうに見ていた。
「入らないのか?たしかに親とかはいなさそうだけどさ。あ!鍵が掛かっているとか?」
私は静かに顔を横に振った
「ごめん。何か抵抗を感じるんだ。」
本当に理由が見当たらないけど。
そんな私の発言に山内君はうーんと首を捻った。
「ならさ、ココまで送ったお礼として家でお茶もらってもいいかな?」
と広野君は言った
ちょっと驚いた。だけど、彼なりの気遣いなのだろう。
多分寂しがりやとかそんな感じで勘違いされたっぽいけど。
「アハハ。ならお願いするよ。立花君もどう?」
私は自然に立花君もそう誘った。
「・・・」
彼は頷いた。いつもの印象から喋らないと思ってた。
「・・・言葉に甘える」
彼は頷いてから少し間が空いてこう呟いた。
「ならさ。先に入って先導しようか?」
と山内君はニヤニヤしていた。多分じゃなくて絶対に勘違いされてる。
「お願いするよ。」
と言っても体の重さはまるで抜けないから、先導してもらうことにした。


「おじゃまします。」
山内君は挨拶しながら玄関に入っていった。
私も玄関に足を踏み入れたが
やっぱり違和感というか廃墟に踏み入れたような感覚に陥る
私は二人を見た。
「・・・」
二人な表情がこわばっているように見えた。
「・・・い、行こっか。」
「う、うん。」
微妙な緊張が空気に張り詰めている。私は電気をつけながら、台所に向かう。
台所に着いたとき、そこには黒い穴がぽっかとり空いていた
「見間違えじゃなかったんだ。」
私は脱力して座り込んでしまった。
「これは何だよ。」
私の後ろでは、広野君があっけに取られていた。
「広野、こっちに」
多分、立花君だと思う。二人の足音が遠のいた後、話し声が小さく聞こえた。
私は体が動かなかった。そして、そんな状態でずっといた。

「大咲さん。」
山内君が私の前に出た。
「これなんだろ。わかんないや。」
本当に何も分からなかった。
「いいかい。大咲さん。この状態は俺が何とかする。」
山内君は強固とした目線を私にくれた
「・・・何も起きてないよ?多分さ。何か急用が出来たんだよ。」
私は何も分からず適当にそう答えた。
だけど、分かっていた。そんなはずが無いって。
「だから、ほら!」
山内君はそう言って、手のひらを向けて伸ばした。
何で手を差し向けたのか分からなかったけど、彼は限りなく真剣だった。
「・・・」
無意識に立花君の方を見ていた。
彼もしっかりとした目線をくれて、ゆっくりと頷いた。

私は手をとって、立ち上がった。
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by piyoppi1991 | 2011-02-16 21:11 | Pilgrim

プロローグ

私は眼を覚ました。
けど、眠たくてそのまま一眠りしようとした。
ただ、私の瞼に集中的な・・・何というか、こうじりじり感が漂っていて・・・
「まぶしっ」
目を開けると太陽の光が私の眼を暖かく照らしていた。
光の眩しさに思わず、布団を跳ねのけて上半身をがばっと起こした。
この原因を確かめようと目をぱちりとして、細める。

・・・。

一瞬目眩がして、眼の前が暗転した。
私は低血圧だから、朝起きの眩み自体は珍しい訳じゃないけれども
目の前が暗くなるほどの眩みはしたことがなかった。
それに眼前がちかちかとする。
原因は案外すぐに分かった。
 
青空が目の前にあったからだ。
雲ひとつなくて青一色の空で、私の目に強烈な光を当ててくる。
そんな光が起きがけの目に当たるのだから、目は眩むし痛い。
でも、目が慣れてくると太陽の光は心地よくて思わずぼぉーっとしてしまう。
こういう時って、 日常を一秒一秒とかみ締めている瞬間とかうんとか。
かみ締めている最中に胸がぽかぽかして、きゅーってした。
「んー、これって恋?」

意味の分からないことを私は思いつきで口走っていた。
朝の私は現実と夢の間を闊歩しているに違いない。
「むー、寝ぼけるのはココまで。」

そう言って両手を両頬をパチンと叩き、もぞもぞしながら布団から出る。
で、何故か全開になっている窓の方へ向かう。
窓の前で表情ゆるませた後、うーんと手をそろえて天に向け
つま先立ちになるほど目一杯の背伸びをした。
そうすると、私の口が自然と開き、新鮮な空気が流れ込むのでとても気持ちいい。
それにつられてついあくびもしてしまう。
「うん、いい朝だ」

こんなちょっとした朝の行為が気持ちよく整うと幸せな気分になる。
そんな朝がある日にはきっと 悪いことなんてない。
気分よく鼻歌交じえ、まだ鳴りもしていない目覚まし時計に適当に目を通し
壁にハンガーで掛けている制服に手を伸ばしベットに置く。
んで、次にパジャマに手を・・・・・・・ん?
私は目覚まし時計へと視線を巻き戻しのように移す。
「鳴っていないじゃなくて、もう鳴ってたんだ。んー、感慨深い。」
私はうんうんと頷いた。
 

そのとき、私はパジャマをパージした。
焦りや困惑の前にまず体が動いた。
次にボタンを外しつつ、制服に手を伸ばす。
無駄を省き、30秒(推測)で支度が終わる。
一息を着く前に手は既にドアノブに手が掛かり、体の重心は前に傾く。
開く隙間50センチに体を滑り込ませ、2階にある私の部屋を飛び出す。
目の前に階段があった。
しかし、私はそれを使わず飛び降りる。
着地体制をとり、1階にある居間の方に体を向けたまま・・・
体はブラさず、4点接地させる。
そのしゃがんだ体制のまま私の銃身を居間に向けて穿つ!
        
「へぶおぅあ」

へんな奇声が廊下に響き渡った。居間に穿かれるはずの身体は床に弾かれて
色々と本当に無駄だった。そして、私はなにをしてるのだろう。
「ひたい。」

え?何、この状況。顔は床にめり込み、お尻は突き出て
要はよくギャグ漫画に出るあれ状態。ごめん、実際にやるとすごく痛いよ。主に鼻が。
「あらあら、なにやってるの?瑠璃」
顔を横にずらすと、人差し指を頬に当てて私の状況を推測するおかあさんがいた。
「おかあさん、時間大丈夫なの?」
「時間?んーん?今5時よ」
 ・・・ん?え、あ、っ、ん?私は錯乱した。
「また・・・やっちゃたの?」
おかあさんは心配顔で私を見つめてくれる。
時計の針を見間違えてました。デジタル式にしようかなと本気で考えてみる。
「そっか・・・・」

私は悟っていた。
「瑠璃、ちょうど朝御飯はできてるから顔と歯をゴシゴシして食べおきなさい。」
おかあさんは洗濯かごを脇に抱え干し場に向かいつつも、私にフォローを入れてくれる。
「なう。」
わたしはお尻を突き出したまま両手で頬を叩く。あ、ひじがごりってなった。
でなくて、気合を入れなおした後、上半身をむくりと起こす。
次にそのまま立ち上がり、居間に向かった。
ドアの前まで着いた時、今さっきのことを思い出し、ため息をついた。
「朝弱いのってつらいなー。」

私はそう言いながらドアノブに手を掛けた後 
居間を通り、洗面所に向かって、顔をさっぱりさせるために蛇口をひねる。
心地よい音を出しながら、水が規則正しくしゃーと流れる。
触ってみると、ひんやりしていてとても気持ちがいい。
その快さに浸りたくて、両手を伸ばしひんやりした水を受け止めて
手の中でたぷたぷさせ、ここで息をすぅーっと吸う。
7分目ぐらい肺が酸素で満たされた後に溜められた水に顔を当てる。
水の冷たさが顔全体に広がってとても気持ちいい。
私は片手でタオルを探しつつもう片手で蛇口を閉める。
片手はタオルを探り当てて、そのまま顔にタオルを押し当てる。
それで、顔を拭き終わると、次は歯磨き。
口の中に冷たい水がはいると飲みたくなるけど我慢。
歯が磨き終わり、私は御飯を食べに居間に着いたら、目の前には朝御飯。
「んーこの細切り昆布がもにもにしてておいしい。」

食事を美味しく食べて、最後にお茶を啜る。
食器を流し場に運び洗い、テクテクと歩いて棚に戻した。
食べ終わった後に私は学校に行く用意をする。
「瑠璃ーもう学校に行くの」
洗濯を干し終えたおかあさんが戻ってきて、私にそう尋ねる。
「今日は部活早めに行って、精神統一したいかな」
私は用意してあるバックを肩に背負い、居間から出て行く
「そうー。玄関にお弁当があるから忘れずにねー」
「わかったー」 
私はそう言いながら居間から玄関に向かう。
そのあと玄関で靴をトントンしながら、片手でお弁当箱をつかむ。
私は玄関のドアを開いたあと、おかあさんに声を掛ける。

「いってきまーす」
「いってらっしゃい。」
 
おかあさんののほほんとした声ですぐに返事してくれた。
だけど、少し疑問が頭に残った。
なんで、私は早く起きたのにいつもどおりだったんだろって。
今日はいつもどおりが違和感に変わった。
でも、すぐにあほらしくなってそんなことを考えるのをやめた。
そして、わたしは家を出た。
 


外は陽気な太陽とちょっとひんやりした風が気持ちいい
学校登校中の光景は特に目立つ点は無く、どこにでもある日常的風景。
適当にてくてく歩き、猫や犬を見て和みつつ、
学校に着くまでに何をしようと考えた。
ひたすら素振りをするかとか足捌きを練習するかとか。
そんなことを考えていると学校が目の前にあった。
自分達の学校はやっぱり普通・・・だけど、変わった点がある。
それは我が校の道場がとっても大きいということと
設備がすごく整っているということ。それだけ、他のものがあまりにも普通なので
変わっていると言えば変わっているように思う。
「よし。さっさと道場に向かおうかな。」

そう言って私は校門をくぐる。
私の学校は南側に北、南、東、西棟と4つに校舎と北側に
グラウンドと道場が別れている。4棟の校舎の真ん中には中庭。
南側のグラウンドと道場の土地は等分になっている。 

そして、歩き終わり目の前にでっかい道場。
その道場の入り口に前に立ち、中を覗いた。

「まだ、だれもいないなー」

着いた時間は6時、人が居ないと言えば当たり前かもと感じた。
道場の中に一足踏み入れたけど、木板のしなる音はしなかった。
ただ、木と布地がこすれる音が聞こえる。この度、私は気が落ち着く。
多分、ここで繰り返してきたことが私をほっとさせるのかなと思う。
落ち着いた気分のまま、私は更衣室まで続く木板を擦るように歩く。
道場の木格子から入る光に照らされた板を踏み終えて、更衣室のすり戸を開ける。
更衣室で道着に着替え、木板の部屋に戻る。
両手に握り拳を作って気合いを入れ
「よし!気合いれるかな!」
とかけ声を出し、修練にいそしむ。




基礎の練習を一通りして、汗がにじむ。

「おっ。いつもよりさらに早いなー。」

私がタオルで顔を拭いていると道場の入り口から声がした
多分この声は私の友達、千夏ちゃんの声だ。
「私は6時に来たよ。いつもより30分早めに来てみた。」
「勘違い?」
「・・・そうです」
 私の時計の見間違えは周知の事実でしたか。
「アハハハ。さすが瑠璃だねー。私なら二度寝する」
カラカラと元気よく笑う千夏ちゃんはショートツインテールがトレードマーク
「そういう手もありますな」
「普通はその手だよね。まぁ瑠璃は時間を大切にしているからなー」
「んーけど、なんかもったいなくない?」
「そうだけど、特に朝は難しいよね。だから、大切にしているなぁってね」
私に親指を立てながら千夏ちゃんはニコっと笑う
「何かテンション高くない?」
私は妙にテンションが高い千夏に訝しげに聞く
「分かる?分かっちゃう?私のこの喜怒哀楽な気持ちが!」
感情が忙しいね。前頭葉がきっとすごく刺激されていると思う。
「何かいいことでもあったの。目玉焼きの黄身が2つだったとか?」
「まぁね」

適当に言ったんだけどな・・・

「いや、黄身二つでこのテンションじゃないよ」
かわいそうなものを見つめる目をした私に気づいた千夏がそう喋った。
「なら、なにがあったの?」
「昨日聞かなかった?今日の午後の授業はナシ!部活し放題!」
あ、そういえばそんな話を聞いてたような聞かなかったような。
「やる気がいまいちない下級生をしっかりみてあげないとねー」
千早は腕をまくりながら鼻をフンフン鳴らす
「そっか・・・私は帰るかな。」
「へ?なんで?瑠璃は私に教えてくれるんじゃない?」
「私は千早に教えられるほどの身分じゃないよ」
千早はこんな感じであっけらかんとしているけど剣道の腕前は三段の持ち主
実際、大会では優勝か準優勝を必ず残す有力者である
「む、よく言ったものですな。うちとしては瑠璃を超える腕をもった人を見たこと無いよ」
「ははは、小学生の内ならできるかもね」
「よく言うなー。反応できない攻めなんて瑠璃ぐらいだけ。」
「大げさだなー。それに私のは剣道ではないよ」
「剣を使った戦いと極小しよう」
千早は私の両肩をガッとつかむ。
「・・・百歩譲っても、剣道は教えれないよね」
「足さばきだけでもいいからさー」
体にまとわりつくように千早は私に頼んでくる。
・・・けど、困ったもので。私のは実際に剣道ではない。詳しくいうと剣術である。
剣道と剣術の違いは流派を持つか持たないかであるのだけれども
私の剣術は俗に言う"一子相伝"で他人には教えれないと言うか
教えちゃ駄目なわけで・・・・・・

「ま、駄目だよね。」
「ちぇ、けど仕方ないかー。でも一応練習には出てよ模擬試合もしたいから。」
「んー頼まれたならやるかな。でも模擬までは自己練してもいいかな。」
「当然!だけど、今日は一本取るよー。」
千早は拳を作り、上に掲げながら私に一本宣告をした。
「おはようございます!」
そんなやりとりをしていると朝練しに来た後輩達が私たちに挨拶をした。
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by piyoppi1991 | 2010-05-19 01:30 | Pilgrim