適当に妄想小説やキャラ絵を 垂れ流したり躊躇したりする そんなブログでございます。


by くるひよ
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君と本を詩う。 起(1/4)

眼が潤んだ彼女が目の前に居た。
彼女の肩をつかみ、自分のほうに寄せる。
「亮介さん。私・・・」
この言葉を聞き、自分は顔と顔を近づけようとした。
彼女は目を瞑った。

・・・・・・
ニタァ

「なんだよ。窓際で渋い顔をしてたかと思ったら・・・」
「実にきもいな」
同僚の友人二人して、妄想に耽っていた自分に訝しげな目線を差し出した。
「なんだよ、きもいとは。」
「何がって、言われると言い切れないほどだが・・・」
「いきなりにやけ出されると誰だってなぁ。」
「おまえだって、俺がそんな感じだったらきもいとか思うだろ。」
「確かに、そうだな。」
喫茶店の窓際で遠くを眺めていた人が急ににやけ出す。
これは・・・気持ち悪い。
「で、なんでにやけてたんだよ。」
「ああ、ここの近くの本屋のTURUYAがあるじゃんか。」
「ああ、あそこね。」
「ああ、あそこで魔女っ子ミラルン買ってるわ。」
「お前その歳でよく買えるな。どこにあるか知らんが、アニメイロとかで買えよ。」
「それが近くにねぇんだよ。仕方ねぇだろ。」
「おいおい、話がそれてるそれてる。」
と友人Aの暴露をスルーして、話の筋を元に戻した。
「で、どしたよ。」
「そこにさ、かわいい人が居てさ。」
「・・・確かに居るな。性格も良さそうな。」
友人Aは知っている様子で、手であごを押さえてうんうんと頭を振った。
「へー、で?そんなに可愛いのか?」
「それが、なんかこうぐっとくるんだよなー」
「陽樹の人食い講座がまーたはじまっちゃう。ふぅ、とろろでも背中に
_流し込もうか?」
と友人Aは頬付きをして、敵意を顔全面で表していた。
ここまで、いやな表情をされると逆に爽やかな気がするぐらいにだ。
ただ、人食いって言われる程、エロに行じたことはない。
「オタクの嫉妬はみぐるしいぞ。普通4,5人ぐらいはあるだろ?な?」
友人Bは常識的なものだと流すが、それはAへ油を注ぐ行為である。
Aの言葉に、12フレームの反応をAは見せ付け体をテーブルにのりあげた。
その時、下のほうでガンッと鈍い音がした。
「な?じゃねぇよ。俺は今静かに怒っている。」
と言ったAの足はぶるぶると震えている。
「まぁまぁ、閑話休題。足、大丈夫か?」
「それで、どうしたんだ。彼氏でも居るのか。」
「何というかのれんに腕押しなんだよ。彼氏は居ないよ。多分。」
「よし!」
友人Aは満面の笑みと涙目でガッツポーズをしていた。
「ふーん。無口な感じか?そういうの苦手だからわからんな。」
「おいおい、そこはいいところだ。」
「オタクは黙ってろ。」

友人Aと友人Bの喧噪は置いといて、彼女のことを考えていた。
AとBの意見は無いようなものだったので、自分でどうにかするしかない
そこで、どうやって遊びに誘っていくかというプランを練ることにした。
思うがままに行動する方法が一番成功率が高い気はするが、
どうにもこうにも彼女の前では必要以上に緊張してしまうのだ。




 その明くる日、仕事終わり夕暮れの中で俺はTURUYAの前に居た。
居るだけで、喉につっかえそうなほど息苦しくただ店の前に棒立ちしている俺が
何故か可笑しかった。何度か深呼吸をかねた後に店内に入る決意をした。
気持ちは前へ前へのつもりだったが、店に入る足はおどろおどろしていた。
彼女を探すために、店内あちらこちらをきょろきょろと見渡す。
10分ぐらいたった頃だろうか、彼女を探せなかったのであきらめて
店内から出ようと自動ドアに向かった。その時、背後から声が聞こえた。

「お客様。何かお探しものでもありますか?」

彼女が居た。
自然と「君。」って言いそうな自分が居て、気持ち悪かった。
多分、店内できょろきょろとずっとしてたものだから、話しかけられたのだろう。
「え、えっと・・・そうだなー。メンズサムライって無いかな。」
「はい。今日、入荷したばかりでレジの前のスペースにありますよ。」
ニコっと笑っている彼女を見て、気持ちがいっそう浮ついてしまう。
店員スマイルだろうけれども。
「そっか、だから見つからなかったのか。」
「申し訳ありません。今後から両方ともに配置するようにします。」
と非礼をわびる様に辛そうな顔で頭を下げる。

「いえいえ。その、別に気にしてませんよ。」
「ありがとうございます。」
そのほっとした彼女の顔見た瞬間、今日一日満たされた感じがした。
しただけであって、結局客としても話しかけることすら出来なかった。
自分でも情けないとは思った。
ただ、あーだこーだと店内でぶらぶらするのもあれだから帰宅することにした。
 
帰宅した後はカーペットの上に座って、
適当にテレビのリモコンを手に取り電源を入れる。
呆然とテレビを見ながら、彼女のことが頭に浮かぶ。
友人Bはいつも通りに口説けといったが、それは相手が乗り気である場合に限る。
誘い文句を振っても、のらりくらりと避けられたらまるで意味がない。
もちろん仕事中ではなく、仕事外で誘った。


「単純に考えて、あんまり彼氏とかに興味ないとか。それとも俺自体が全くの圏外っ
_て事かな。」

とテレビを目の前にして呆けながら、そんなことをつぶやいていた。






翌日、俺は勤務中に仕事の報告書を上司に提出した。
上司はその報告書を見て、眉をひそませた。
理由は単純に報告書自体にケアレスミスが多いと言うことだった。
いよいよを以て、重症だ。
今は雑用程度の仕事だから大した責任はないからよかったものの、
恋愛がらみが原因で仕事に影響が出てしまった事は問題だ。
このままうじうじと考えていても、何も進展などしないどころか、
仕事にしろプライベートにしろ中途半端になってしまう。
俺はそう思った瞬間、彼女に直接的なアプローチを試みようと決意した。
それから、無駄に仕事へ没頭して今日一日を
のめり込むように過ごした。
 
 日が暮れたころ、「今TURUYA前、そろそろ決める」と友人に
メールで今日中に決着をつけるつもりだと送信した。
自分でも、急だとは思ったが
彼女の態度を鑑みるとただ引き伸ばしにするのはただのストーカと変わらない。
店前で自分でも分からないような微妙な表情を携えていた。
そんな表情のままでフラフラと本屋の中に入る。
最近よく聴く店内でのBGMが妙な緊張感を煽って
この場からダッシュで逃げたくなるような焦燥感に駆られる。
だからといって、逃げるわけにもいかないので彼女を探すことにした。
しかし、店内を2,3回往復したが彼女の姿を見ることが出来ない。
もう一度、店内を見回そうとしたら背後から声をかけられた。

「何か、お探しの物でもありますか?」

・・・違う女性だった。

店内を出た後、俺は夜空を漠然ととただただ見つめていた。
見つめ5秒間終えた後に、地上へ目を移すと燦爛と輝く建物が視界に入った。
躁々とした雰囲気に嫌気がさして、思わず、足下にあった缶を蹴り飛ばした。
缶は2,3回はねた後、行き場を失ったように道ばたで転がった。蹴り伸びた足を
ひっこめた後、溜息を吐いた。結局、どうこうもないので煌びやかな街の中へ、
とぼとぼと帰る他なかった。
家に帰って、結果はどうだったというメールを見た気がしたが
何かをしゃべる気力すらなかったので翌日返すことにして、今日は寝た。
 
問題は、店に彼女がいない日はその日だけでは無かったのだ。
決意した日から、彼女を一度も見ることができなかった。
自分はある種失恋したかのような気分に陥った。
その気分を紛らわしたくて、毎日のようにTURUYAに寄る。
だが、彼女はいなかった。
やがて、焦れてきて店員に聞くようにした。
だが、彼女は辞めたのだという事実を聞くばかり
それでも、情けなくも未練がましくTURUYAによる。
だが、それもまた無意味にすぎなかった…
1週間経った頃ぐらいだろうか、無気力になりつつも
もはや体になじんでTURUYA来店が習慣になっていた。
そろそろ、やめてもいい、そう思いながら足が勝手に運ぶ。
そんな情けない俺の7度目の正直の帰路のことである。
相も変わらず、夜に映えるぎらぎらと輝く街の中で帰っている途中だった。
通り過ぎる夫婦やカップルを視線に入れずに道路の横側に在る店に目を移す。
「はぁ、なんだろうなこの気持ち。今ならストーカーの気持ちすらわかる気がする。」
と物騒なことをつぶやきながら、端端にある店を横目にもそもそと歩く。
しかし、淡々と家へと向かう寂しさに耐えかねて、前方の居酒屋にでも入ろうと
ある店の横を横切った時に、何かが自分の視界に入った。

「え?」
自分の目を疑いたくなかった。
何故なら、横切った古い本屋の前に
彼女が居たからだ。
思わず自分は動転して、振り返って彼女を見るという流れを二度三度と繰り返す。
気が落ち着いたところで、彼女がどういう状況に置かれているか観察する。
彼女は、古い本屋の前で立ち尽くして居た。
その様子は、どこかそわそわしていて不安げな表情も携えていた。

まるで、告白する前の女子のようだった。

自分の中で、嫌な仮説が脳内に敷き詰められていく。
まさか、いや、けれども
といった単語がぽこぽこと頭に湧き出ては思考が停止する。
どれくらい経ったかは分からないが頭が冷めてきて、
今の状態がチャンスだと気づく。
ここで話しかけねば一生会えないという背水の陣でもあるような気もするが。
だからこそ、自分は彼女に話しかける。

「あのー、何かお困りですか?」

それこそ自然体に、言葉は出るときに出るのだ。
「え?あ・・・」
彼女は急に話しかけられたせいかあたふたしていた。
これはこれでかわいかった。
「だ、大丈夫です。す、すみませんでした~!」
と彼女は走り去って言ってしまった。

って、え?

排水の陣、チャンスとともに自分は水に流されていた。
ぱっと見えた光明はそれこそ一瞬過ぎて泣きたくなって来た。
強烈なため息がでてしまいそうになったので、
顔を下に向けたら、あるものが目に入った。

「ハンカチ?」
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by piyoppi1991 | 2012-03-02 09:40 | 君と本を詩う。